受けとめる覚悟をもって
相談者の悩みをほぐし、
本質的な解決の糸口を見いだす
ハラスメント・人間関係ホットラインなど
玉置 和彦
相談員
電話にて相談者の相談を聴き、相手の心情を汲み取りながら相談に寄り添います。
職場におけるハラスメント、いじめ、人間関係の悩み、メンタルヘルスに関する相談などをお受けし、ご契約企業様の“働く環境の改善や働きやすさの向上”をサポートする相談員をご紹介します。
相談者の「こころの相談」に対応
私は主に「ハラスメント・人間関係ホットライン」「こころと暮らしのほっとライン」を担当しています。
「ハラスメント・人間関係ホットライン」には、「今日、上司にこんなことを言われた」と、気持ちを抑えきれず感情のままにお話しになる相談と、「こんなことがあった。なんとかしてほしい」と、解決を求めてお話しになる相談があります。
また「こころと暮らしのほっとライン」は、メンタルヘルスに関するご相談が中心となります。例えば「心療内科での処方薬が合わないが、主治医に伝えられない」「食欲がなく出社するのがつらい」といったことです。
そのような、ご契約企業様の従業員や家族からの“こころの相談”の電話対応をしています。
電話相談では、相談者の声を聞きながら“まだ余裕がある状態”なのか、“早急に対応すべき状態”なのか、“自分の状態はどの程度認識できているか”、この相談者への対応では“何を避けるべきか、最もリスクが高いことは何か”といった考えを始終巡らせながら対応します。
電話相談はよく「声しか情報がない」と言われますが、逆にいえば「声に集中できる」ことがメリットです。相談者の声のトーンや話し方、間合い、電話の向こうから聞こえる音なども聞き取って細かな情報を拾い、相談者がどんな状況で電話しているかを想像し理解できるように努めています。
問題の本質を探り、助言する
私の担当する窓口では、相談者が電話できるのは1日1回30分という制約を設けています。日を変えて何度か電話をくださる相談者もいますが、基本は“一期一会”です。「電話をして良かった」と思っていただけるかどうかはその電話1回にかかっているため、相談者の気持ちに寄り添い、対応に満足いただけるように全神経を集中します。
先日、「子ども(成人)が、依存症ではないかと思う。病院に連れていったほうがよいか」というご相談がありました。当初、相談者は「これは病気だ。病院へ」という考えしかありませんでした。しかしお聞きした状況から、病院に連れていく段階ではないと感じました。強引に病院に連れていこうとすれば、親子関係の悪化も懸念されたためです。そこで「お子さんが困っていることは何ですか」とお尋ねし、「困っていることを話せる関係づくりからやってみませんか」とお伝えしました。間違った選択を防ぎ、本質的な問題を解決できる方向性を一緒に探ろうと臨みました。結果的にアドバイスに納得いただき、「誰かに話せたこと」でホッとしていただけたのは大変嬉しかったです。
“受けとめる覚悟”を持つ
私たちは相談を受けた翌日には、相談者の承諾の範囲内で、その内容を報告書にしてクライアントに提出します。報告書の作成にあたっては、私の場合、終話後に音声をあらためて聴き返してまとめています。つまり電話相談対応中は、記録はメモ程度にとどめ、話を聴くこと・対話することに徹します。
電話相談は、相談者が「話したい、打ち明けたい」と思ったまさにその時に掛けてこられますから、いわゆる“主訴”のタイミングが早いと言えます。相談員はそれを“即座にしっかりと受けとめる覚悟”ができているかが、まず問われるのです。
相談者は、誰にも打ち明けられない問題を抱えながら、「話を聴いてくれるのはどんな人かな。ちゃんと聴いてくれるかな。話しても大丈夫かな」と、不安な気持ちで電話をくださいます。ですから私は第一声、「勇気を出してよく電話をくださいましたね。ありがとうございます」と、声だけでなく全身を使って、その気持ちを伝えます。それも“受けとめる覚悟”を表す一つの方法です。私たち相談員は常に“受けとめる覚悟” を持って電話相談に臨む――これに尽きると思っています。
Profile
たまおき かずひこ
精神保健福祉士、公認心理師。医療機関にてソーシャルワーカー、カウンセラーとして勤務したのち、2010年入社。相談対応に加え、「働く人のメンタルヘルス」「職場のハラスメント防止」などのテーマで研修講師も務める。