導入事例
株式会社ジョイフル本田
事業内容
ホームセンター事業
・関東圏でホームセンターを17店舗運営
・専門小売店を7店舗運営
・資材・プロ用品、デイリー・日用品、ガーデン・ファーム、インテリア・リビング、ペットレジャー用品の販売
住宅リフォーム事業
・システムキッチン・バス・トイレのリフォーム
・屋根・外壁塗装などの増改築
・カーポート・デッキの外構工事 ほか
ホットライン利用対象人数
5,200人
チャット相談を導入後、今まで接点を持てなかった従業員の声に対応できるようになりました
1975年の創業以来、地域に根ざし愛着の持てるホームセンターを運営してきた株式会社ジョイフル本田。「必要なものが必ずあるお店」「暮らしにウキウキとワクワクをもたらすお店」を展開し、2025年に創業50周年を迎えます。
同社では2013年より「企業倫理ホットライン」をご利用いただいてきましたが、より多くの従業員に声をあげてもらいたいと、チャット相談の機能追加を検討。2023年にチャット相談「 こころぼ」を導入されました。
メッセージアプリを日常的に利用する人が増える中、若年層に限らず従業員の方々の中では「チャット相談の方が気軽に通報できる」と考える人も多くなっているようです。サイレント離職や人間関係のトラブルに起因する休職などを防ぐべく、従業員の小さな声も逃さず耳を傾けるコンプライアンス課のみなさまの取り組みを伺いました。
チャット相談には今まで発信する機会がなかった「小さな声」も寄せられるので、職場環境の改善に大いに役立っています。
リスクマネジメント部 コンプライアンス課 井川幸代(写真右)様
リスクマネジメント部 コンプライアンス課 菅澤麻奈美(写真左)様
2013年より「企業倫理ホットライン」をご活用いただき、新たに2023年にチャット相談「こころぼ」をご導入いただきました。その経緯についてお教えいただけますか?
井川様:当社は千葉・茨城・埼玉など関東圏を中心に、ホームセンターを運営しています。店舗によっては売り場面積が東京ドーム数個分になることもあり、1つの店舗には多くのスタッフが勤務しています。年齢層は若年層から中高年まで幅広く、雇用形態もパート・アルバイトや正社員とさまざまですし、中途入社者をはじめ毎月新しい従業員が入ってきます。
私たちリスクマネジメント部コンプライアンス課では、これまでダイヤル・サービスの「企業倫理ホットライン」に寄せられた声などをもとに従業員にヒアリングする等、職場環境の改善に取り組んできました。会社や組織のあり方について、従業員から直接声を聞くことの多い部門なので、従業員の声をしっかり経営に届ける役割を担っていると感じています。
これまで利用してきた「企業倫理ホットライン」で相談員の方々のプロフェッショナルな対応や、通報や相談(以下総称して「内部通報」と記載します)があった際の「個別報告書」のクオリティを見て、従業員の思い(主訴)を引き出すスキルが高いと感じていました。
従業員にはできるだけ長く、心地よく働いて欲しいですし、離職率はできるだけ低減したい。そして、若年層を中心に「電話では内部通報しづらい」「考えがまとまらないのでチャットで相談したい」という声も増えていました。
こうした背景の中、ダイヤル・サービスの担当者から「企業倫理ホットライン」にチャット相談の機能を追加する提案をもらい、内部通報専用のスマホチャットアプリ「こころぼ」を導入することで、スタッフの困りごとを丁寧にすくい上げたいと考えたのです。
菅澤様:私は人事総務部で健康管理業務に携わり、2024年1月にコンプライアンス課に異動してきました。その後、内部通報をしてくれた従業員にヒアリングする中で分かってきたことがあります。それは電話では勇気がなくて内部通報できないケースが増えているということです。また、従業員が内部通報をしてくれた際も、匿名通報の場合はどの店舗で何が起こっているのか特定できず、従業員が悩んでいても解決に至らないこともありました。
私たちとしては、従業員からの声はどんな些細なものでもありがたいですし、できるだけ会社側から声を拾うようにしたいと考えています。その際、使い慣れたスマートフォンからメッセージアプリのようなやり方でチャット相談ができれば、もっと従業員の声を拾いやすくなると感じていました。
今はSNSやメッセージアプリなど、テキストコミュニケーションでのやり取りが当たり前です。「こころぼ」を導入することで、言いたくても言えない思いを抱えている従業員にとって内部通報するハードルが下がるのではないかと思いました。
"内部通報が増えることは、働きやすい職場に近づくこと。チャット相談は内部通報のハードルを下げる一つの手段です。"
井川幸代様
貴社における労働環境やコンプライアンスについてどのような課題を感じていましたか。
井川様:内部通報の内容として、かつてはパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなど、ハラスメントについての内部通報が多くを占めていました。しかし最近は明らかなハラスメントは減ってきました。今では内部通報の多くが人間関係のトラブルです。
一般論になりますが、強いトーンで何かを言われた時に言い返せなかったりすることがあると思います。それが組織の上位者であれば、尚更言い返しにくいのではないでしょうか。当社のような業態であれば、店舗スタッフは固定化されたメンバーで働いていることもあって、そのような状態が発生することもありますし、嫌なことをする人がいてもすぐに離れることはできません。
一方の管理職側も、ハラスメントを恐れるあまり必要な指導がうまくできなくなっていました。時代に合わせたコンプライアンス意識にアップデートし、役職に応じたコミュニケーションスキルや指導力を身につけてもらう必要がありました。
また、内部通報の多くが女性からなのですが、コンプライアンス課はもともと男性だけで運営していたんです。店舗スタッフは女性の割合が多く、女性ならではの身体的不調や考え方を男性に言いにくいと感じることがあったようです。
菅澤様:実際、通報者にヒアリングしてみると、古い慣習で業務を行っていたり、意見の合わない人を排除しようとしたりするなど、チームワークのやり方をアップデートできていないケースが見受けられました。
人間関係のトラブルが解決されないままになっていると、メンタル不調として表出しやすいのも特徴です。これは加害者・被害者ともに同じで、人間関係のトラブルは休職・離職に繋がっているのではないかと感じています。「ハラスメントではないから大丈夫」と軽く考えず、職場環境の悩みや人間関係のトラブルについて、もっと気軽に声をあげられる体制を作らなくてはならないと感じました。
チャット相談の導入は、貴社でもはじめての取り組みです。導入に際し、社内からどのようなご意見がありましたか。
井川様:実は導入する際、賛否両論があったんです。「誹謗中傷が増えるのでは」「通報件数が増えすぎてコンプライアンス課の業務量が増大するのでは」といった心配の声もありました。
しかし、「内部通報が増えることは、働きやすい会社に変化できているということだ。そのためにコンプライアンス課が忙しくなるなら人員を増強すればいい。一歩ずつ企業を良くしていくことこそ、企業経営の健全なあり方ではないか」と思いました。
事前に、最終決定者である社長に確認したところ、「内部通報が増えれば、悩んでいる従業員の声をたくさん聞けるチャンスができるじゃないか」と賛同してくれて、導入することが決まりました。
"若年層や女性など「チャットなら気軽に言える」人が増えている。一つでも多くの悩みを解決へ繋げるために、テキストコミュニケーションを活用できるのは心強いと感じています。"
菅澤麻奈美様
導入時に、従業員のみなさまに対してどのように周知しましたか。
井川様:できるだけ多くの従業員にチャット相談という新たな内部通報の手段が増えたことを伝えたいと思い、告知ポスターを作成して全ての店舗に直接出向きました。そして店長に導入のねらいやできることを丁寧に伝えていきました。時には「どうして来たんですか?」と驚かれることもありましたが、会社の真剣さを伝えようと必死でした。
告知ポスターには、従来活用していた「企業倫理ホットライン」の案内に、「こころぼ」のお知らせとQRコードを掲載。また、ダイヤル・サービスさんに名刺サイズの「こころぼ専用告知カード」を作っていただき、従業員の名札に常に入れられるようにしました。「こころぼ専用告知カード」については、売場を統括する管理者であるグループ長からメンバー1人1人に直接手渡ししてもらうようにお願いしました。
1つ1つの店舗に説明し、1人1人の従業員に対して「あなたの声は会社にとってありがたいことなのだ」と真摯に向き合うことで、会社の本気度を示したいと考えたのです。
社内の機運が盛り上がったタイミングで、一気に導入しようと考えていました。ダイヤル・サービスの担当営業の方がスピーディに告知カードなどを手配してくださったおかげで、丁寧な説明とスピーディな導入を実現することができました。
具体的にチャット相談をどのようにご利用いただいていますか。
井川様:20代の若手従業員や、入社2カ月など入って間もない従業員から「チャットなら気軽に相談できそう」とご相談いただいています。中には、それまで内部通報窓口の存在を知らなかったという従業員が「こんなことも相談していいですか?」「これ(他の従業員の言動)って、コンプライアンス違反ではないですか?」と判断しかねて連絡をくれることもあります。
電話では言い辛いけれど、チャットなら話しやすいと感じる若年層は多いようで、これまでなかなか表に出てこなかった声に接することができるようになりました。
菅澤様:伝えたいことがしっかりまとまっていなくても、「とりあえず気持ちを吐き出したい」などの用途で使っている従業員もいるようです。先日「とにかく辛くて、どうしたらいいか分かりません」というチャット相談をいただきました。最初はダイヤル・サービスの相談員の方が「こころぼ」でやり取りしてくれて、その後私たちコンプライアンス課で引き継いだのですが、「あなたの辛い気持ちを教えてください」と寄り添い、「声をあげてくださりありがとうございます、あなたの声のおかげで会社がより良くなっていきます」と感謝を伝えたところ、少しずつ心を開いて状況を詳しく話してくださいました。
その方は匿名相談だったのですが、社内で調査を続けて最終的にはその方の困りごとを全面的に解決することができました。
電話による内部通報と比べて、チャットでやり取りできる「こころぼ」での相談にどのようなメリットがあるとお感じですか。
井川様:何よりも使い勝手がいいですね。「こころぼ」の場合、最初にダイヤル・サービスの相談員が通報者からの相談を受け、1時間を目安にやり取りしてくれます。そのうえで通報者の要望や状況に応じて、私たちコンプライアンス課に引き継いでくれます。
プロフェッショナルな相談員がしっかりやり取りしてくださった後、私たちが通報者と直接対話できるので、問題解決に繋がりやすくなったと感じています。
すぐ解決できないケースでも、私たちが引き継いだ後に時間をかけて少しずつ対話を続けていくことで、解決できるケースも増えてきました。通報者とのやりとりもほとんどの場合が2~3日で済みますので、コンプライアンス課の業務が増大しすぎることもありませんでした。
匿名通報の方が多いのですが、通報者が自分のことを明かすことなく使えるところもありがたいですね。ただ、最初は匿名相談だった方も、やり取りしているうちに心を許してくれて最終的には身元を明かしてくださることも増えています。
菅澤様:電話通報の場合、話しているうちに感情が高ぶって泣いてしまったり、怒りをぶつけてしまったりする方もいます。もちろん感情を表現することは大切ですが、冷静に話せず主訴をうまく伝えきれないこともあるはずです。
その点、チャットだと自分の気持ちを整理しながら書き進めるため、感情を落ち着けてコミュニケーションできます。文章にすることで内省も進み、気持ちを伝えやすくなるという方も多いようです。緊張感や警戒心をできるだけほぐし、安心して困りごとを伝えていただけているなと感じています。
テキストコミュニケーションですと、やり取りの履歴が残り過去の状況を遡れる点も、非常に使いやすいと感じています。通報者の気持ちや考えていることを掘り下げるのは、なかなか難しいものですが、短文でのやり取りですとコミュニケーションが続きやすく対話がしやすいですね。
ダイヤル・サービスの相談員の対応について、どのように感じていらっしゃいますか。
井川様:相談員の方々は、社会保険労務士や公認心理師、産業カウンセラーなどの資格を持っており経験豊富なベテランばかり。私たちではたどり着けなかった通報者の主訴を明確にしてくださいます。それだけでなく、窓口を利用する従業員の心に寄り添い、親身に相談に乗ってくださると感じますね。
内部通報が入った際に送付いただく「個別報告書」(※)にも、通報者と話したときの様子や心理状態が明瞭に書かれていて、相談員のスキルの高さを感じます。ダイヤル・サービスさんが55年培ってきたノウハウが、相談員のみなさんにしっかり受け継がれていると思いました。
※ ダイヤル・サービスが顧客企業に対し、内部通報の内容を整理して報告する書面
ご導入後、どのような数字的な成果や、従業員のみなさまからの反響がありましたか。
井川様:2023年11月に導入して以来、累計通報件数のうち約4割が「こころぼ」経由での内部通報でした。特に組織変更や異動が多くメンタル不調を抱える人が増えやすい春先は、「こころぼ」からの内部通報が半数を超えています。
導入時の想定通り、若年層や転属して間もないメンバーからの内部通報も寄せられています。これまで表に出てこなかったような声も届くようになりました。
「こころぼ」のおかげで、辛いと言えないままやめてしまう「サイレント離職」を防げた例もありましたし、個々人が一人で抱えこむ必要はないとメッセージすることもできました。寄せられる内部通報の声を通じて、企業風土をより良くしていかなければならないということも改めて感じています。
「こころぼ」の導入を検討中の企業へメッセージをお願いします。
井川様:内部通報のチャネルが増えたことで、悩んだときに相談する選択肢を一つ増やせたのではないかと思っています。悩んだらすぐチャットで相談できれば、働きやすさに繋がっていくと思います。
菅澤様:内部通報専用のスマホチャットアプリ「こころぼ」なら、誰もが使い慣れたチャット形式で気軽に相談しやすくなり、内部通報のハードルが下がります。その結果、確かに内部通報の件数は増えますが、「なんでも相談していいんだ」と思う従業員が増え、会社の心理的安全性は高まります。そして、寄せられた1件1件の声に耳を傾けることで、確実に会社は良くなっていくと信じています。
「こころぼ」は、企業のコンプライアンス課題を解決に繋げるきっかけづくりができるツールだと思っています。