電話カウンセラーから~ルールを守ることは当たり前なのか 第158号メルマガ
様々な事業に安心・安全が求められる昨今、一つの事故が事業継続に
ダメージを与えることも少なくありません。
特に、企業活動に正しさが強く求められており、
事故の背景に企業・労働者側のルール違反があった場合、損害は計り知れません。
企業のコンプライアンスに関する研究では、1件の重大な事故の背景に多くの
不注意や不安全行動(労働者本人または関係者の安全を阻害する可能性のある行動を
意図的に行う行為)によるヒヤリハットがあるとするハインリッヒの法則など、
職場のシステム面が注目されてきました。
これにより、世界的に労働関連法の整備が進み、企業は独自にルールを厳格化し、
現場でのマニュアルを定め、労働者にルールが浸透するように対処してきました。
それにもかかわらず、現在も労働者のルール違反を原因とする事故が後を絶ちません。
ダイヤル・サービスのコンプライアンス通報窓口では、通報者から
「ルール違反を問題だと思って、上司に報告しても聞く耳を持ってもらえない」
とか、「実際に大きな事故にならないと会社は動かない」と言われることがあります。
このような労働者の声を聞くうち、労働者は「ルールは大切なもの」と理解しながらも
「ルールを守ろう」という気持ちが損なわれていくのではないかと考えるようになりました。
普段、私たちは「電車が無事目的地にたどり着かないのではないか」
「飲食店の料理が腐っているのではないか」とは考えません。
安心・安全であることが「当たり前」だと思っています。
しかし、通報を通して労働者の思いを聴くと、安全を維持する作業を毎日繰り返す
ことこそが大変なことなのだろうと分かります。
この労働者の努力が「当たり前」と低く評価されることで、労働者は
「ルールを重要視しなくなる」のではなく「ルールを守るモチベーションを失う」
のではないでしょうか。
例えば厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、労働者の不安全行動として
「防護・安全装置を無効にする」という点が真っ先に挙げられています。
労働者は自らの命を守る装置の重要性は理解していますから、この場合、
労働者がルールを守ることへのモチベーションを失っていると考える方が自然です。
近年、労働者のワークモチベーションを高める方法について研究が進んでいます。
中でも、労働者の安全行動につながるモチベーションの研究では、労働者が
「仕事を通して世の中に貢献できているという感覚」や
「仕事を通して自分の所属する組織が注目され、高く評価されることで、
自分自身を肯定的に捉えられる感覚」を持つことで、安全な行動を日々続けよう
というモチベーションにつながるのではないかと考えられています。
安全行動につながるモチベーションを高める現場レベルの実践としては、
仕事の意味や評価、日々の安全行動がどのような結果となっているのかを明確にすることが
重要だと考えられるでしょう。
また、ユーザーレベルでは、私たちが受けているサービスが、誰かの安心安全行動の上に
成り立っていることを自覚し、感謝することが大切なのだろうと感じています。