Vol.155 ハラスメント

フリーランス新法における「ハラスメント対策」

 2024年11月1日、フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されました。この法律は、フリーランスの方と発注事業者間の取引の適正化、及び、フリーランスの方の就業環境の整備を目的としています。
 業務委託期間の長さによって該当する項目は異なりますが、発注事業者に下記の項目を義務付けています(※1)。

1.書面などによる取引条件の明示 
2.報酬支払期日の設定・期日内の支払 
3.7つの禁止行為
 ①受領拒否 ②報酬の減額 ③返品 ④買いたたき ⑤購入・利用強制
 ⑥不当な経済上の利益の提供要請 ⑦不当な給付内容の変更・やり直し
4.募集情報の的確表示
5.育児介護等と業務の両立に対する配慮
6.ハラスメント対策に係る体制整備
7.中途解除等の事前予告・理由開示

 1~4と7は業務に関する項目、5と6は、フリーランスの方が心身の健康を保ちながら、仕事と家庭生活を両立させるための項目と考えることができるでしょう。
 5では、発注事業者に、フリーランスの方の申し出に応じ、育児介護等に関し必要な配慮をするよう求めています。被雇用者と異なり、フリーランスの方は育児介護休暇などの制度を利用することができません。そのため配慮を求めているわけです。
 指針(※2)には、配慮の例として「妊婦検診日時と打合せ日時が被らないよう調整する」「介護のために一部業務をオンラインに切り替えられるよう調整する」などが挙げられています。また、申し出を阻害すること、申し出や配慮を受けたことを理由に不利益な取り扱いをすることを「望ましくない行為」としています。「してはいけない行為」とされていないのは残念ですが、抑制力にはなるでしょう。
 6の対象となるハラスメントは、「セクシュアルハラスメント」「妊娠・出産等に関するハラスメント」、「パワーハラスメント」の3つです。育児介護等への配慮の申し出に関する嫌がらせは「妊娠・出産等に関するハラスメント」になります。そして、「方針等の明確化及び周知・啓発」「相談体制の整備」「迅速かつ適切な対応」「相談者や行為者のプライバシー保護」など、被雇用者と同様の対策が求められています。

 ダイヤル・サービスのハラスメント相談窓口には、法律施行以前にもフリーランスの方から相談が入ることがありました。「社員じゃないから会社に相談しても対応してもらえないだろう。それどころが仕事を切られるかもしれない。どうすればいいのか…」と思い悩む様子に、フリーランスという立場の不安定さを感じたことを覚えています。今回の法律施行により、ハラスメントで思い悩む方が少なくなることを期待したいものです。


※1 公正取引委員会フリーランス法特設サイト(公正取引委員会ホームページ)
   https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/
※2 特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針(厚生労働省)

ハラスメント・人間関係ホットライン

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