Vol.142 食と健康

アレルギー様食中毒

<Q>
 焼き魚を食べた後、口の周りが赤くなり、じんましんが出ました。食物アレルギーだと思い病院に行ったところ、「アレルギー様食中毒」と言われました。食物アレルギーと何が違うのですか。

<A>
 魚やその加工品などを食べた後、短時間で顔面の紅潮や発疹、頭痛、じんましんなどを起こすことがあります。それは「ヒスタミン」を原因とする食中毒なのですが、食物アレルギーの症状とよく似ていることから、アレルギー様食中毒と呼ばれています。重症の場合、呼吸困難になることもあるので注意が必要です。

 ヒスタミンは食品中のアミノ酸の一つであるヒスチジンという成分から作られ、低温管理が必要な食品を不適切な温度で保存した場合に増えてしまいます。その食品を食べることが原因の食中毒なのです。一方、食物アレルギーは食物に含まれるたんぱく質の成分(アレルゲン)に免疫機能が過剰に反応してしまうことによって症状が起こります。

 ヒスチジンを多く含む食品は、マグロ、サンマ、サバ、イワシなどの赤身魚とその加工品です。これらの食品は、ヒスタミンが増えた状態でも、魚の見た目の変化や腐敗臭がないため、気付かずに食べてしまうことが多いようです。また、ヒスタミンは熱に強く、一度作られてしまうと加熱調理しても減らすことはできません。食中毒を予防するためにも、以下のポイントに気を付けてください。

1.生魚は常温で放置せず、速やかに冷蔵庫で保管し、干物など加工品も、低温保存すること。
2.ヒスタミン産生菌はエラや消化管に多く存在するので、魚のエラや内臓はできるだけ早く除去する。
3.新鮮なうちに食べ、鮮度が低下したおそれのある魚は食べないようにすること。
4.解凍する際は、冷蔵庫で解凍するなど、可能な限り低温で短時間のうちに解凍する。凍結と解凍の繰り返しは避ける。

 ヒスタミンが大量にできていると、食べたときに舌が「ピリピリ」することがあります。通常と異なる刺激を感じた場合は、食べずに処分してください。

 ヒスタミンによる食中毒は、体質とは関係なく、誰にでも起こる可能性があるといえます。食物アレルギーと似ているため、見分けるのが難しい場合もあります。適切な治療を受けるためにも、症状が出たら医療機関を受診しましょう。