Vol.136 食と健康

トマトがだしになるの!?

<Q>
 テレビで、トマトはだしになると紹介していました。“料理にうま味が加わりおいしい”そうですが、酸っぱいトマトがだしになるって本当ですか。

<A>
 だしというと、日本の伝統的な昆布やかつお節、煮干しなどを思い浮かべますね。意外に思うかもしれませんが、トマトも立派なだしになるのです。そもそも、だしとは動物性や植物性の食材に含まれるうま味成分を抽出した汁のことを指します。

 うま味の元になっているのは、昆布では「グルタミン酸」、かつお節では「イノシン酸」、干ししいたけでは「グアニル酸」といったアミノ酸や核酸です。トマトのうま味も、昆布と同じグルタミン酸で、熟すにつれて量が増えます。さらにトマトにはグアニル酸も含まれています。グアニル酸には加熱調理によって増えるというおもしろい特徴があります。だから、よりうま味を感じることができるのです。生食の多い日本とは違い、加熱料理が主流となる欧米では、トマトはまさにうま味の元になるだしと言えます。

 うま味の特徴としては、昆布単品のだしより、昆布の「グルタミン酸」とかつお節の「イノシン酸」の合わせだしの方が、よりおいしくなります。これを味の相乗効果といいます。つまりトマトソースやスープに、肉や魚介類のイノシン酸をプラスすれば、さらにおいしさがアップするということです。うま味成分がたくさん詰まっていると、薄味でもおいしく感じられるので、減塩効果も期待できます。

 トマトは、果肉よりも種の周りのゼリー部分にグルタミン酸が多く含まれるので、種は除かずそのまま使いましょう。生のトマトが手に入らない時は、水煮にしたホールトマト、トマトピューレ、ジュース、ドライトマトも立派なだしになります。定番のパスタソースや煮込み料理はもちろんですが、味噌汁やおでん、肉じゃがなどの和食にも合うのがトマトの魅力です。ぜひうま味だしのひとつにトマトを活用してみませんか。