世代間ギャップが起こる仕組み
新入社員研修が済み、職場に配属された新人と接する機会が増えた方もいるかもしれません。そのなかで、「世代間ギャップを感じた」ということも多々あるのではないでしょうか。今回は、世代間ギャップについて、交流分析という心理学の概念を使って考えたいと思います。
交流分析では、思考・感情・行動にまつわる心の状態を“自我状態”と呼び、P(Parent:親)、A(Adult:大人)、C(Child:子ども)とに分けてとらえています。それぞれの特徴を簡単に説明すると、Pは価値観に従っている状態、Aは“今・ここ”の出来事を分析的に吟味して、全力で対応している理性的な状態、Cは感覚的に反応している状態と表現できます。
さらに、Pは自他ともに厳しく律するCPと優しく支えるNP、Cは思うまま自由に振舞うFCと周囲の大人を気遣う素直なACとに分けられます。世代間ギャップについては、Pの自我状態の成り立ちを考えると理解できそうです。
私たちはこの世に生まれると、身近な養育者たちに育てられます。養育者とは、両親、祖父母、学校の先生などです。子どもは、養育者たちの信念や理念、スローガンや、地域の風土、風習、文化など、さまざまな価値観をPの自我状態に取り入れていきます。
Pの自我状態は12歳ごろにはほぼ出来上がると言われていますが、それ以降も成長していきます。中学、高校、大学と、学生生活の中で身につくものもあるでしょうし、就職してから会社の先輩や上司の影響を受けた価値観もPの自我状態に取り入れられていきます。つまり、Pの自我状態にどんな価値観が入っているかで、その人の思考・感情・行動は特徴づけられます。
こう考えると、Pの自我状態は先人たちから受け継いだ大切な価値観だといえます。しかし、無反省に自分のPに従っていると、世代間ギャップに苦しむことになりかねません。たとえば、「若者には厳しく指導すべきだ」という、厳しく律するCPの価値観に従った行動ばかりしてしまったら、ハラスメントだと言われてしまうかもしれません。
今の若い世代のPの自我状態には、どんな価値観が入っているのでしょうか? もしかすると多様性や公平性といった価値観が多いのかもしれません。
もしも世代間ギャップを感じたら、まずは自分の中の価値観を吟味してみましょう。ポイントは、Aの自我状態をうまく使うことです。つまり、自分のPの価値観が、“今・ここ”で起こっている問題(出来事)を解決するために役に立つのかどうか、分析的によく考えてから行動する、ということです。価値観は時代とともに変わっていきます。相手の価値観をお互いが尊重しあうことで、気持ちよく仕事ができるとよいですね。