Vol.109 食と健康

要注意シーズン突入! アニサキス症

 「イカの刺身を食べていたら白い糸のような虫が出てきました。少し食べてから気付いたので害はないかと心配です」「サバやサンマには寄生虫がいることもあるので気を付けるようにと聞きました。酢締めにすれば大丈夫でしょうか」などの相談が、管理栄養士の窓口には寄せられます。

寄生虫の正体

 サバ、サンマ、アジ、イワシ、ヒラメ、サケ、カツオ、イカなどの海産魚介類の刺身には、アニサキスという寄生虫の幼虫がついていることがあります。これが生きたまま体内に入ってしまうと、食中毒の原因になる可能性があります。人の胃や腸壁に侵入し、腹痛や吐き気を起こすことがあるのです。秋の味として親しまれるサンマが出回る10月ごろに発生件数が増える傾向にあります。

アニサキス症の予防方法

 魚を購入する際は、新鮮な魚を選びましょう。アニサキス幼虫は主に内臓の表面に寄生していますが、鮮度の低下や時間経過とともに筋肉(可食部)内へ移動する場合があります。
 このため、購入して持ち帰る際は、鮮度が落ちないように氷や保冷剤で冷えた状態を保つことが大切です。また、丸ごと1匹で購入した際は、速やかに内臓を取り除き、そして、内臓は生で食べないでください。
 目視で確認することも大切です。白い糸状のアニサキス幼虫を見つけたら除去しましょう。

安心して食べるには

 アニサキス幼虫を死滅させるには、加熱と冷凍の方法があります。加熱の場合、中心温度60℃で1分以上または70℃以上が目安です。冷凍の場合、-20℃で24時間以上が目安になります。ちなみに家庭用の冷凍庫の温度は-18℃が一般的です。
 市販の冷凍イカや魚はアニサキス幼虫が死滅しているので大丈夫ですが、生イカ、生魚の生食は注意が必要です。酢締め、塩漬け、わさびをつけても死滅しません。冷凍処理をしていないシメサバなどの加工食品は目視で確認するようにしましょう。

養殖の魚なら大丈夫?

 養殖魚の場合、使用する稚魚、餌、育つ場所によってアニサキス症の危険があるかが変わります。
 人工的に育てた稚魚なら感染の可能性は限りなく低いですが、天然の稚魚を使っている場合は、注意が必要です。また、生きた魚の餌を用いていると、そこからアニサキスに感染することがあります。食中毒のリスクが全くないわけではありません。そして養殖する場所も関係します。陸上養殖の閉鎖環境では心配はないのですが、海中に網で囲う生けすなど一般養殖では、天然の魚が入ってくることがあるので感染する可能性はあります。

 魚の生食は日本の独特な食文化ですが、注意の必要な魚もあります。おいしい魚料理を安心、安全にいただきましょう。