Vol.91 ハラスメント

男性従業員と育児休業

 ダイヤル・サービスのハラスメント相談窓口では、職場内の様々なハラスメントに関する相談を受けています。その中でも、出産や育児にかかわる相談の傾向が変化しつつあります。今までは女性従業員からの相談が圧倒的に多かったのですが、育児・介護休業法の改正に伴い、男性従業員からの相談が増えています。

 2022年4月より、事業主に対して、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備が義務付けられました。「研修」「相談窓口の設置」等のいずれかを実施しなければいけません。また、妊娠・出産の申し出があった本人または配偶者に対して、個別に制度周知、および、休業の取得意向の確認を行う義務が事業主に課せられました。また、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和され、今までの「引き続き雇用された期間が1年以上」が廃止されました。「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件について、無期雇用労働者と同様の取り扱いになります。(引き続き雇用された期間が1年未満の有期雇用労働者の場合、労使協定の締結より除外可)

 2022年10月には、育休とは別に、男性従業員の育休取得を目的に「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設されました。「子の出生後8週間以内に4週間まで」取得が可能となり、さらに2回に分割して休業取得もできるようになりました。なお、休業中の就業に関しては、「労使協定に締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能」とされています。

 そして、2023年4月1日には、従業員1,000人超の企業に対して、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられました。男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」のいずれかをインターネット等、一般の方が閲覧できる方法で公表する必要があります。

 このように、男性従業員も積極的に育休制度を利用することができるようになりました。ですが、相談窓口には、職場の理解が十分でなく、育休制度を利用した男性従業員からの「パタニティ・ハラスメント(育児参加しようとする男性に対する嫌がらせ)ではないか」という相談も少なくありません。また、「悪いレッテルを貼られているのではないか」「自分だけ休んでいいのだろうか」「保育園の送迎中に寄り道している姿を見られた」等、育休を取得したことで罪悪感を抱いている男性からの相談も入ってきます。どうやら、職場の雰囲気がそういう気持ちにさせるのだそうです。

 いずれにせよ、誰もが安心して育休制度を利用することができるためには、職場の体制の整備はもちろんですが、職場の雰囲気も改善していく必要がありそうです。

関連リンク

参考:育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(厚生労働省)

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