伝え方のヒント~NVCの4つの要素~
2022年4月にパワハラ防止法が施行され、自分の言動がパワハラと言われるのではないかと不安を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、パワハラと言われない、コミュニケーション作りのヒントとなるNVCの4つの要素をご紹介します。
NVCとは、nonviolent communication(非暴力コミュニケーション)の略で、マーシャル・ローゼンバーグ博士によって提唱されました。ローゼンバーグ博士は、思いやりが失われ争いが起こってしまうのはなぜかと研究を続けるうちに、言葉の使い方の重要性に気づきました。お互いに理解し合える聴き方、話し方を探求した結果、開発したのがNVCです。NVCは具体的でシンプルな方法で、そのプロセスは次の4つの要素で構成されます。
① 観察(observations)
② 感情(feelings)
③ 必要としていること(needs)※本稿では短縮して「ニーズ」と表現。
④ 要求(request)
①の「観察」は状況を観察し、事実と解釈や評価を分けて表現することです。例えば、朝、同僚に挨拶して返事が無かったら、あなたは「無視した」と思うかもしれません。しかし、「無視した」はあなたの解釈であり、「返事が無かった」が事実です。
事実と解釈を分けず「無視しただろう」と相手を責めたら、言い争いになるかもしれません。しかし、「さっき挨拶したけど返事が無かった」と事実だけを、あるいは、「さっき挨拶したけど返事が無かったよ。無視されたかと思ったよ」と事実と解釈を分けて伝えれば、相手を責めることにはならず、言い争うこともないでしょう。
②の「感情」は自分が何を感じているかを表現することです。同僚に挨拶しても返事が無かった状況を想像してください。あなたは何を感じたでしょうか。「非常識だと感じた」「馬鹿にされたと感じた」と答える人がいるかもしれません。しかしこれは、「感情」ではなく「評価」です。「感情」とは「寂しさ」や「怒り」などシンプルな言葉で表現されるものです。
「非常識だ」と評価をそのまま発言すれば、一方的に相手を責めることになります。しかし「返事が無かったから寂しかった」と発言すれば、自分の「感情」を述べているだけで、相手を責めてはいません。相手も受け入れやすくなります。
「感情」をとらえ、適切な言葉を当てはめられるようになると、コミュニケーションが良くなるだけでなく、気持ちの整理もしやすくなります。「感情」と評価を混同しないよう意識しましょう。
③の「ニーズ」は「感情」とセットになっています。「ニーズ」が満たされないために「感情」は起こります。挨拶に返事が無く、寂しさを感じたとしたら「相手と親しくなりたい」という「ニーズ」があるのかもしれません。「無視したな」「非常識だ」などと、解釈や評価を伝えても「ニーズ」が満たされることはありません。
「感情」を明確にすると本当の「ニーズ」を自覚することができます。そして、「ニーズ」を満足させるために適切な④「要求」をすることができます。
NVCの4つの要素を心の中で意識するだけでも、コミュニケーションは変わっていきます。最初は難しいかもしれませんが、チャレンジしてみてください。