Vol.70 ハラスメント

怒りを感じたときの対処法

 先日、電話相談窓口で相談者からこんな質問を受けました。
 「腹が立つことが多くてストレスが溜まるばかりです。こんなときは相手に怒りをぶつけたほうがいいんでしょうか?」

 このときは、相談者の本当に話したかったことは別にあり、怒りについては回答しないまま、話は別方向に流れていきました。しかし、相談後、どう回答すれば良かったのかと悩んでしまいました。

 「相手が自分より弱い立場の人の場合は怒りをぶつけるべきではない」ことははっきりしています。弱い立場の人は反論することも防御することも難しく、深く傷つく可能性が高いからです。もちろんパワーハラスメントや虐待と言われる可能性もあります。

 それでは対等かそれ以上の相手であればどうなのか。頭をよぎるのは昔の青春ドラマです。不良同士が怒鳴りあい殴り合った後にお互いを認め合い、仲良くなるというお決まりのパターンです。しかし、青春ドラマのようなハッピーエンドになるためには、「自分や相手の本音(一次感情)に気づき、言葉にできる」力が必要です。

 怒りは二次感情であり、その奥には自己愛が傷ついて起こる一次感情(不安、恐れなど)があると考えられています。よって、人に怒りをぶつけても、自分の一次感情に対処しない限り、もやもやと不満が残り続けることになります。

 青春ドラマではケンカの後、「おまえなかなかやるじゃないか」とか「実は俺はこう思ってたんだよ」などと言い合いながら笑いあったりしますよね。お互い本音(一次感情)を話し認め合うことで、自己愛が満たされ、すっきり大団円となるわけです。

 残念ながら、現実はそんなにうまくはいきません。自分の一次感情に気づかないまま、怒りだけをぶつけると、たいていの相手は攻撃されたと感じます。相手は闘争、もしくは逃走モードに入りますから、言い返されてケンカになるか、言い訳されて逃げを打たれるかになるでしょう。

 どちらにせよ、あなたは満足できず、怒りは収まりません。そのため、怒りの感情が湧いたとき、相手にそのまま怒りをぶつけることはお勧めできないと言わざるを得ません。一呼吸おいて、別の方法で対処することを考えましょう。

 怒りを感じたときは、「私は不安なんです」などと一次感情を表現するようにしてみると、自分自身も納得できますし、相手も受け入れやすいでしょう。あるいは、怒りの相手から離れて、まったく別の気分転換法を考えるほうが安全なことも多いものです。

 怒りは本来自己防衛のための感情です。自らを傷つける結果にならないよう、上手に対処していきましょう。

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