腸の住人~腸内細菌~
「“植物性乳酸菌”という言葉を耳にしたのですが、これはどのような乳酸菌ですか」「腸活中です。カレーを作るときヨーグルトを入れますが、加熱すると効果がなくなりますか」 などのご相談が管理栄養士の窓口には寄せられます。
乳酸菌、腸内細菌という言葉は知っていても、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。体を健やかにするのに役立つ腸の住人である腸内細菌について紹介します。
◆腸内細菌は育てるもの?
大腸には数百種類、約100兆個の腸内細菌が住んでいます。たくさんの細菌が腸内で種類ごとに集団を形成しながら住み着いている様子が、お花畑のように見えたことから腸内フローラと呼ばれるようになりました。腸内細菌の中でもよい住人として知られているのが、乳酸菌やビフィズス菌です。ビフィズス菌も当初は乳酸菌に分類されていましたが、多くの点で性質が違っていたため独立してビフィズス菌になりました。
腸内細菌は基本的に私たちが食べたものを餌に生息しています。よい腸内フローラにするには、乳酸菌やビフィズス菌が好むオリゴ糖や食物繊維を与えるような配慮も必要です。バランスが取れた腸内フローラは菌が多様です。多様な菌が居ればお互いに助け合え、よい結果が出せるようになります。
◆乳酸菌は乳製品だけに入っているの?
乳酸菌はたくさんの種類があり、学術的には形態、発酵形式、発育条件によって分類されています。店頭などで見かける植物性乳酸菌、動物性乳酸菌という呼び方は、生息していた場所が植物由来か動物由来かによる一般的なものです。ヨーグルトや熟成肉、生ハムなど動物由来の発酵食品に含むものを動物性乳酸菌、漬物類(ぬか漬け、キムチ、ザワークラウト、ザーサイ)や日本酒、みそなど植物由来の発酵食品に含むものを植物性乳酸菌と呼んでいます。
しかし、植物性乳酸菌の中には乳を発酵させるものもあるため、植物性乳酸菌を使ったヨーグルトなどの発酵乳もあります。「動物性」だから「植物性」だからといってその機能によし悪しはありません。 もちろん、おいしさにも影響はありません。
◆ヨーグルトは加熱したら無意味?
ヨーグルトなどの発酵食品に入っている乳酸菌は種類よって差はありますが、75℃以上で15分間の加熱でほとんど死滅してしまいます。また、ビフィズス菌は、50℃より高くなると徐々に死滅します。総じて熱に弱いといえます。乳酸菌やビフィズス菌を摂取したいときは、50℃以上にならないように温めましょう。
ただ、死滅した菌も、腸内でさまざまな働きをすることがわかっています。また、凍結させて作ったフローズンヨーグルトの菌は、休眠状態になり活動が停止するだけで、体内に入ると効果を発揮します。つまり、生きていても死んでしまっても、しっかりと役割を果たします。ヨーグルトをそのまま食べても、カレーなどに入れて加熱しても、凍結しても健康効果を期待できるのです。
◆腸内フローラは日進月歩で研究されている!
乳酸菌やビフィズス菌は有害物質を作り出す有害菌の増殖を抑えて、腸内フローラを改善してくれます。また、病原菌の増殖を防いだり、排便をスムーズにする大切な働きもしています。ほかにもコレステロールや血圧の低下作用、免疫機能を高めることなどが明らかになってきています。さらに、いろいろな研究が進められています。
肉食に偏った食事や不規則な生活、ストレス、加齢などが原因で腸内フローラのバランスが崩れてしまいます。乳酸菌やビフィズス菌を含んだ食品を積極的に取り入れて補いましょう。快食、快便、健康体を目指して、腸活を始めてみませんか。