Vol.49 ハラスメント

男性の育休取得促進と社会貢献

 ダイヤル・サービスのハラスメント相談窓口に、ある男性社員(以下、A氏)から「育児休業を取得したいが、上司から不利益を被るようなことを言われた」とご立腹な口調で電話が入りました。A氏は、配偶者と相談し、第一子を二人で育てたいと考えたそうです。事前に上司に育児休業の取得の意思を伝え、上司も承諾していたようでした。しかし、A氏は希望の休業期間を明確に伝えていなかったために、上司と口論になったとのこと。上司が突然、「1か月程度だと思っていたが、6か月も取得するなら話は別だ」「取得することは止めないが、復帰後は覚悟しろよ」と言ったとか。社内で前例がないことも拍車をかけてA氏は窮地に追い込まれた様子でしたが、育児休業を取得する決意は固いようでした。

 令和2年度の育児休業取得状況は、女性81.6%(R元83.0%)、男性12.7%(R元7.48%)でした(※)。男性の取得率は過去最高になりましたが、政府の目標である13%には届きませんでした。政府は、男性の育児休業を取得しやすくするために様々な政策を発表し、育児・介護休業法も改正しています。今年は、「産後パパ育休」が創設(令和4年10月1日施行)されます。従来の育休とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで休暇を分割して2回取得することが可能となり、出産直後にママとパパが一緒に育児しやすくなります。

 企業は社内体制を整備し、その体制や制度を周知して、制度取得の促進を図らなければなりません。そして、「マタハラ(マタニティー・ハラスメント)」や「パタハラ(パタニティー・ハラスメント)」と言われる、男性社員も含めた妊娠・出産・育児に関する制度利用の妨害や嫌がらせといったハラスメント行為を防止する措置も講じる必要があります。制度整備はもちろんのことですが、日ごろの労働環境や職場の雰囲気・慣習、そして人間関係が良好に保てているかどうかが肝要です。

 社内の体制や制度などをこの機会に見直したり、個々人がより意識を高めたりすることで、多様な働き方を受け入れ、「労働と育児の両立」の課題に取り組むことができるのではないでしょうか。子育ては、その時々にしか味わえない“育ち”の貴重な体験です。子育てを社会全体で支える仕組みを作ることは、SDGs(持続可能な開発目標)の目標17「パートナーシップで目標を達成しよう(政府、企業、一般の人々が協力する)」として、持続可能な社会貢献にもつながるでしょう。

※厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」より
相談事例は特定の相談ではなく、さまざまな事例を再構成したものです。

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