Vol.25 コンプライアンス

コンプライアンス研修の目的とは?ネタの探し方やテーマ例を紹介

2023年10月3日

コンプライアンス研修は、コンプライアンスの重要性を従業員に理解してもらうには効果的な方法です。この記事では、コンプライアンスの概要やコンプライアンス問題が引き起こされる原因、コンプライアンス・リスクの回避方法のほか、コンプライアンス研修の目的、研修ネタの探し方、テーマの例などを分かりやすく解説しています。

コンプライアンスの重要性が叫ばれている昨今ではありますが、単に「コンプライアンスを意識して業務に取りかかるように」と従業員に伝えても、具体性がなく、なかなか真意を理解してもらうことは難しいでしょう。そこで、ぜひ取り入れていただきたいのがコンプライアンス研修です。今回は、コンプライアンスの概要やコンプライアンス問題が起きる原因などでコンプライアンスの基本的なことを把握していただきながら、コンプライアンス研修とその必要性、研修ネタの探し方、テーマの例などについてお伝えしていきましょう。

コンプライアンスとは

コンプライアンスとは法令遵守を意味する言葉です。一般的に法令は、国会が制定する「法律」と、行政が制定する「命令」の総称として使われています。企業においてのコンプライアンスとは、法令に加えて、就業規則や社会的なルールに則ることも含まれています。
コンプライアンスという言葉を聞く機会が増えていると思いますが、残念なことにコンプライアンス違反をしている企業が散見されているのが事実です。コンプライアンス違反は、「ハラスメント行為」、「隠ぺい工作」、「不正処理」、「水増し請求」、「補助金の不正受給」など多岐に渡りますが、組織ぐるみで行われているもの、一従業員が起こしたものと発生の発端は様々です。いずれにしても、ステークホルダーや社会に悪いイメージを植え付けて、信用の失墜につながっています。せっかく積み上げてきた実績や信頼であっても、コンプライアンス違反が明るみになれば一瞬で崩れてしまいます。
企業が継続していくためには、様々なルールのもとで、社会に認められるように事業を展開していくことが重要と言えるでしょう。

社内でコンプライアンス問題が起きる理由

コンプライアンス問題が起きる要因としては、下記のようなものがあります。
●売上至上主義である
会社が存続していくためには利益をあげていかなくてはなりません。しかし、利益をあげることだけを考えて営業活動を続けていくと、「売上をあげさえすれば、何をしてもいい」というように、組織の考えがゆがんでしまうことがあります。コンプライアンス問題に発展しているにもかかわらず、長く引き継がれて、社内では当たり前のことになっている悪しき慣習もあるようです。
最近は、内部告発によってコンプライアンス違反が明るみになることも多く、信用が失墜した企業が後を絶ちません。目先の利益を求めて行動するのではなく、企業の継続を見据えることが重要です。

●コンプライアンスに対しての知識がない
コンプライアンスに対しての知識がないと、自分のやっていることがコンプライアンス問題に発展しているのかどうかが判断できません。よって、「上司に言われたから」というような理由で、知らない間に不正に加担してしまうことがあります。
特に、コンプライアンスの問題を組織的に抱えている企業は、上司の言うことは絶対というような風潮があります。社会人経験のない新入社員などは、「これが会社というものなんだ。お金を稼ぐには色々な手を使わなくちゃいけないんだ」と、間違った理解の仕方をしてしまう可能性があります。
ハラスメント行為も、知識がないことで発生しやすいコンプライアンス違反です。被害者から訴えられて気が付く人も多く、「指導のつもりだった」、「コミュニケーションをとって仕事を円滑に進めようとしていただけだった」、「強く言ったほうが、すぐに理解できると思っていた」など、悪いことをしているというよりも、正しいと思っていたことが裏目に出ているという感じです。
他にも、利害関係のある国家公務員への接待は「国家公務員倫理規程」という法律で規制があります。この法律の中では、国家公務員が利害関係のある人から贈与や接待を受けることを禁止しています。例えば、利害関係のある国家公務員と会食などをしたときに、軽い気持ちで少し多く出したとします。それが極端な話、1円多く出しただけであっても接待と見なされることがあるというわけです。
いずれのケースも、コンプライアンスとはどういうことかを理解していなかったために、食い止められなかった例となります。こういった事態を避けるためにも、定期的にコンプライアンス研修を実施したり、社内報や社内メールで事例を交えながら発信したりし、従業員の理解を深めるようにしましょう。

●コンプライアンス違反が発生しやすい体制で業務を進めている
横領や着服の事件が報道されることがありますが、「犯人は何十年も1人で経理を担当していた」という証言が多く見られることから、「他人の監視の目がない」という抜け道を作りやすい体制が、コンプライアンス違反を発生させてしまった理由のひとつとして考えられます。また、働きぶりは真面目だったという報告もあるようで、信頼していたからこそ任せていたという企業も少なくないようです。
経理部門へは、不正防止のために複数の従業員を配属させるのがベストですが、数人でやっているような零細企業では、バックヤードである経理部門へ複数の人材を投入するのは難しいかもしれません。そういった場合は、取締役などが毎月入出金チェックをするなどし、経理担当者1人で完結することがないようにしておきましょう。
また、情報漏えいなども不完全な体制によって引き起こされてしまうコンプライアンス違反です。チェック体制やセキュリティの強化によって回避できる余地は十分あるので、しっかり体制を整えるようにしましょう。

コンプライアンス・リスクを回避するには?

「コンプライアンス・リスク」とは、コンプライアンス違反によって、社会的な評価や信用が失墜してしまう危険性を指しています。このリスクを回避するには、コンプライアンス違反を起こさない組織づくりが重要となります。
まず実施したいのが、従業員に対して行うコンプライアンス教育や研修です。これらは定期的に実施することが望ましいと言えます。講義内容には事例などを交え、最後にはグループディスカッションなどを行って知識の定着をはかるといいでしょう。また、定期発行される社内報などに連載するのもひとつの方法です。事例を漫画にして読みやすい形式にするなど工夫をすると、従業員が理解しやすくなります。
従業員の理解が進むと、コンプライアンスを意識して行動するようになるため、リスクを回避しやすくなります。「これはおかしい。コンプライアンス違反では?」と感じるか感じないかは非常に重要なポイントです。また、コンプライアンス違反が発生した場合、それを早期に発見できる組織づくりもしておきたいところ。風通しの良い職場を目指すのはもちろんのこと、従業員が安心して利用できる相談窓口を設けておくといいでしょう。

コンプライアンス研修とは

企業にとって致命傷となる可能性があるコンプライアンス違反。コンプライアンス研修とは、法令遵守を理解する研修のことで、企業が健全な経営をするためにもぜひ取り入れておきたい研修です。人事・労務の担当者がテキストなどを利用して行うこともあれば、外部の専門家に依頼するケースもあります。
コンプライアンスを理解することは、全従業員に必要なことですが、注意するポイントは置かれている立場によっても異なります。理想なのは、階層別に研修内容を組み立てるということ。まずは学ぶ目的を伝え、事例などを交えながら理解を深めてもらうようにしましょう。

コンプライアンス研修の必要性

コンプライアンス違反が発生して問題化すると、企業の存続危機に及んでしまう可能性があります。発生を防ぐために、まずは従業員がコンプライアンスを理解し、違反をするとどのような事態になってしまうのかを想像できる思考を養っておく必要があります。こういった側面から見ても、コンプライアンス研修でリスクや事例を伝えることは非常に重要です。企業が社会からの信用を受けながら活動していくには、必要なカリキュラムと言えるでしょう。

コンプライアンス研修の目的とは

コンプライアンス研修の主な目的は下記のようなものです。

●コンプライアンスへの理解と知識の向上
基盤となる目的は、従業員の理解が進むことや知識の向上です。コンプライアンスを意識しながら業務を進めることができるようになるため、不正が起こりにくい環境が自然に構築されていきます。理解があれば、不正を察知することもできるので、早期発見が期待できます。

●コンプライアンスへの意識が高い集団作り
コンプライアンスへの意識が高い集団作りも研修の目的のひとつです。コンプライアンスへの意識が高い集団は、よりよい企業文化が構築できる集団でもあります。クリーンでフェアな職場は、対外的にも好印象となるため、経営にもよい影響を与えることでしょう。

●社会的信頼の確保
コンプライアンス研修を実施して意識を高めることは、信頼の確保も目的としています。コンプライアンスへの意識が高く、行動が伴った組織は、社会的な信頼が確保しやすい集団とも言えるからです。不正が起きにくい環境下にある企業であれば、取引先も安心して依頼できるでしょう。

コンプライアンス研修のネタ探しの前にやるべきこと

コンプライアンス研修を実施することは、企業が安定した事業を進めていくためには重要とお伝えしましたが、ただ開けばいいというものではありません。まずは、受講対象者の属性を絞り込み、「何を学んで理解してもらいたいのか」といった目的を明確にします。
例えば、新入社員をターゲットにコンプライアンス研修を実施するのであれば、コンプライアンスの基本的な知識を学んでもらうほか、社会人としてルールを守ることの大切さ、一従業員が違反することで、企業や取引先にどのような迷惑をかけてしまうのかなどをできるだけ具体的に話すようにします。また、コンプライアンス違反に直面した場合に取るべき行動などを身に付けてもらうようにし、自らが抑止力となりえることを伝えてきましょう。

コンプライアンス研修のネタの探し方

できるだけ多くのネタを集め、その中からセグメントするようにします。探し方としていくつかの方法を紹介するので参考になさってください。

●コンプライアンス違反事例
・ニュースサイトや新聞などに掲載された事例
「コンプライアンス違反」、「コンプライアンス違反 事例」などの検索キーワードを入れて検索してみましょう。
・厚生労働省のサイトにある違反事例
「厚生労働省 コンプライアンス 違反事例」といったキーワードで検索してみましょう。
・コンプライアンス関連の書籍
弁護士が執筆、監修している書籍が目立ちます。法曹の目線で書かれているものが多いので、裁判事例などが確認できます。コンプライアンス違反の事例だけでなく、判決なども記載されている書籍では、違反別の罪の重さなども把握できるでしょう。初心者向けの書籍もあるので、まずはそこからチェックしてみると理解が進みやすいでしょう。
・各種弁護士サイトに掲載されている裁判例
弁護士事務所のサイトからも、裁判例などが確認できます。専門的ではあるものの、サイトは一般向けに発信されているものが多いので、専門書に比べると平易な内容になっている印象です。

●違反事例以外(コンプライアンスの定義や研修の進め方など)
・コンプライアンス研修をサービス提供している企業サイト
「コンプライアンス研修」などで検索します。掲載されているカリキュラムをチェックすると、おおよその内容が把握できます。
・厚生労働省関連のサイト(コンプライアンスの定義、法令遵守の徹底に係る取組の実施状況等)
厚生労働省のサイトでは、コンプライアンスの定義や実施状況が把握できます。

コンプライアンス研修で使えるネタ

人々の相談窓口として50年の歴史があるダイヤル・サービスでは、これまで蓄積されてきたノウハウを生かしたコンプライアンス研修を実施しています。

一般従業員向けのカリキュラム例は下記のようなものです。自社で実施する場合の注意事項も併記したので参考になさってください。
➀コンプライアンスを学ぶ目的
コンプライアンスとは何かを深く掘り下げます。まずは目的を伝えることで、研修で何を学ぶべきかが明確になってきます。自社で企画・実施する場合は専門的になりすぎないようにし、従業員が自分と直結できるような構成にしましょう。

➁健全な企業風土の醸成のために
実際にあった事例をもとに成功例・失敗例を学びます。自社で実施する場合は、コンプライアンス違反として事例が多く理解しやすいものから、「こんなこともコンプライアンス違反なんだ」と、意外性のあるものまで幅広く紹介するのがベストです。特に後者は、無意識にコンプライアンス違反になっていることが多いので、まずは意識させることが重要でしょう。
<これもコンプライアンス違反です>
・自宅のパソコンに情報を移して作業すること:セキュリティが脆弱な可能性があり、情報漏えいにつながることがあります。必ず支給されたパソコンで作業するようにしましょう。
・備品の持ち帰り:机やいすなどを持ち出す人はいないと思いますが、文房具など鞄に収納できるようなものを自宅に持ち帰って使っているという従業員がいます。大きさは関係なく、どちらも企業が用意した備品で、所有権は企業側にあります。許可なく私物化するのは、窃盗とみなされる場合もあるので注意しましょう。
・情報漏えい:業務上知りえた情報は、家族や親しい友人であっても安易に話してはいけません。日常の話題のつもりであっても、その情報が外部に流出することで、大きな損害につながることもあるからです。また、関係者同士でも、電車の中や飲食店などで秘密情報などについて話すことはNG。常にだれが聞いているか分からないという考えを持っていることが必要です。
・無申請での残業:残業については事前申請制度を導入している企業があります。就業規則にこの記載があるにもかかわらず、個人の判断で残業をするのはコンプライアンス違反です。注意程度で済むことにはなりますが、会社のルールを把握していない従業員ということで、不審に思う上司もいるかもしれません。就業規則は、いつでも閲覧できるようにしておくということが労働基準法で義務付けられています。義務に従っている企業であれば、自分の行為が就業規則に反していないかはすぐ確認できる環境下にあるということです。
➂適切な内部管理体制の様態
コンプライアンスを日常業務に活かすためにメカニズムを学びます。

➃職場コミュニケーションの重要性
リスク把握をするために日頃のコミュニケーションの重要性を学びます。

➄まとめ:研修の総括を行います
質問を受け付けたり、感想を聞いたりする時間にしてもいいでしょう。

また、ダイヤル・サービスでは経営者向けのコンプライアンス研修も実施しています。
コンプライアンス経営を推進するためには、トップ層の力強いリーダーシップが必須です。いかに制度上で整備されていれも、トップ層の考え方、姿勢によっては殆ど機能していないというケースも少なくありません。
企業コンプライアンスの第一線で活躍する講師が、経営陣としていかにコンプライアンスを推進していくか?について、過去・現在の取組み状態も確認しながら、レクチャーします。

コンプライアンス研修の効果を高めるポイントとは?

コンプライアンス研修を実施して安心してしまう人事・労務の担当者や経営者がいるかもしれませんが、単発で行っても意識の定着にはつながらず、効果は見込めません。効果を高めるにはいくつかのポイントをクリアしておくことが重要となります。

●定期的に実施する
研修を受けた直後は意識が高まりますが、徐々に薄れてしまうことは否めません。業務に影響がでるほど頻繁に行う必要はありませんが、年に数回実施し、従業員がコンプライアンスを自然に意識できるような状況にしましょう。

●階層別に実施する
コンプライアンス研修は、コンプライアンスの大切さを自分事として考えられるようになることが目的のひとつでもあります。よって、自分の置かれた立場で研修が行われることが望ましいです。経営者、管理職、一般職に分けて行うほか、部門別に実施するのも効果的と言えます。

●研修後はディスカッションやレポート提出などを実施する
知識の定着はアウトプットすることでも促進されます。研修の最後にディスカッションをして発言すること、レポートにまとめることで理解が深まるほか、関心も高まるでしょう。研修を受け身で終わらせないことが重要です。

●日常的に啓蒙し続ける
毎日研修を行うことはできませんが、意識の持続は日常の啓蒙でも補完できます。ポスターを掲示したり、コンプライアンス違反のニュースがあれば上司が朝礼で報告したりしながら、コンプライアンスへの意識を定着化させましょう。社内報を発行している企業であれば、コンプライアンスに関する記事を連載化するというのもひとつの方法です。

コンプライアンス研修は定期的に実施を

従業員の理解を深めるために、コンプライアンス研修を実施することは重要という点はご理解いただけたと思います。また注意すべきは「定期的に、ターゲットに合った内容で開催する」ということです。コンプライアンスへの意識の高さは、健全な企業づくりにもつながります。これまでコンプライアンス研修を実施したことがないという場合は、これを機に検討されてみてはいかがでしょうか。なお、ダイヤル・サービスでは、コンプライアンス研修サービスもご用意しています。企業ごとのカスタマイズも可能なので、ぜひお気軽にご連絡ください。

企業倫理ホットライン

健全な企業活動を守るためのコンプライアンス通報窓口

当社のサービスを網羅したサービス資料を差し上げます。

当社のサービスを網羅したサービス資料を差し上げます。
また、メルマガでは定期的に人事の方向けに有益な最新情報を発信しています。

メールマガジン登録

資料請求

資料をご請求いただき、誠にありがとうございます。
後ほど、資料ダウンロード用URLを記載したメールをお送りさせていただきます。
その際、メールもしくはお電話させて頂く場合がございますので、予めご了承ください。