Vol.143 メンタルヘルス

観察力を磨くコツ~よりよい目標を設定するために~

 夜長月ともいわれる9月。多くの企業では、上期目標の成果を振り返り、下期突入前の目標の練り直しに頭を悩ませているかもしれません。このときに意識したい視点が「観察」です。よりよい目標を設定するために、観察することについて考えてみたいと思います。

 ビジネスシーンで設定した目標には何かしらの成果が求められます。より良い成果を得るには観察から始まると言っても過言ではありません。なぜなら、目標を設定するためには、物事を観察して変化に気づく力である「観察力」が必要だからです。つまり、現状を把握するために目の前の「モノ」に目を向け、そのモノを運用(制度、慣習など)している「コト」を理解し、それらを采配している「ヒト」を観察するということです。

 この時点で、物事の本質を見抜く力である「洞察力」を求めているわけではありません。あくまで表面的な部分を注意深く見ることに注力し、客観的に情報を収集することが大切です。目標を設定する際、得意な分野や達成できそうな事柄に注目しがちですが、まずは主観を排し、多角的な視点で物事を見ることを心がけるとよいかもしれません。

 「観察力」が高い人の共通点として、①日頃から周りをよく見ている、②固定観念にしばられない、③好奇心旺盛、などがあげられます。目標設定の作業をする時期だけではなく、日頃から積極的に情報収集のためのアンテナを張り、興味関心をもって物事を観察することが、観察力を磨く秘訣かもしれません。

 なにより難しいのが「ヒト」の観察です。人の価値観は千差万別だと頭では理解していても、無意識のうちに自分の基準に照らしたり、好き嫌いの色眼鏡で判断したりすることもあるでしょう。そこで、恣意的にならないために、一般的な傾向として示された「観察モデル」をワンクッション挟むことも一案です。「観察モデル」とは、ある統計分類による人のコミュニケーションスタイルの特徴に基づいて分類された、いくつかのタイプを指します。自分が納得できる「観察モデル」を持っておくと、人に対する固定観念に囚われ過ぎずにすむかもしれません。

 例として、リーダーを4つのタイプに分類するPM理論があります。PM理論とは、1966年に心理学者の三隅二不二氏らが提唱した理論で、リーダーシップ行動は「P:目標達成機能(Performance function)」という組織の目標達成や問題解決をする働きと、「M:集団維持機能(Maintenance function)」というメンバーとの人間関係を良好に保ち、組織の雰囲気作りをする働きの2つで構成されているという考え方です。例えば、両方の機能がともに大きいPM型は、組織をまとめながら目標を達成できる、理想的なリーダー像だと言われています。

 注意すべきは、観察モデルを用いた「タイプ分け」の目的は、観察すべき人を特定タイプに分類することではなく、その視点を通して具体的に観察し、理解することにあります。

 目標設定をする際、現状を「モノ」「コト」「ヒト」で観察するよう意識してみると、下期の目標達成にもよい成果が表れるかもしれません。ぜひ、参考にしてみてください。

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