Vol.140 ハラスメント

「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態報告書」から思うこと

 5月17日に、厚生労働省から「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(調査実施者:PwCコンサルティング合同会社)が公表されました。

 結果を見ると、「過去3年でハラスメントを受けたと回答した労働者」は、パワハラが19.3%、次いで、顧客等からの著しい迷惑行為(以降、カスハラ)10.8%、セクハラ6.3%でした。

 令和2年度の調査では、パワハラ31.4%、カスハラ15.0%、セクハラ10.2%でしたので、総じてハラスメントについては減少していることがわかります。とはいえ、職場内に、パワハラを受けている人が5人に1人はいる計算になります。実際の「人」で想像すると、かなり多いと感じられるのではないでしょうか。

 また、今回の調査で、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント(以降、マタハラ)を受けたと回答した女性労働者は26.1%、男性労働者は24.1%でした(※1)。令和2年度は、女性労働者26.3%、男性労働者26.2%でしたので、やや減ってはいますが、他のハラスメントと比べると下げ幅は小さく、より一層の防止対策が必要と考えられます。

 以上のように、ハラスメントを受けた労働者の割合は減少傾向にあるようですが、就活等セクハラについては、令和2年度が約4人に1人、令和5年度が約3人に1人で、増加しています。そして、女性より男性のほうが多いという結果になっています。行為者では「インターンシップで知り合った従業員」、ハラスメントの内容では「性的な冗談やからかい」が最も多くなっています。

 従業員側は一緒に働く学生をちょっとからかって仲良くなろう、程度の気持ちなのかもしれません。セクハラ防止法ができて間もないころ、「セクハラ、セクハラと言われると、コミュニケーションが取りづらくなる」と言っていた人が多かったなあと思い出します。それから20数年。良好なコミュニケーションを保つために性的話題は必要ありません。意欲に燃える就活生をがっかりさせるような言動は慎みたいものです。

 そして、これらのハラスメントを受けた後の行動では、マタハラ(男性)以外の全てのハラスメントで、「何もしなかった」が最も多くなっています。パワハラ、マタハラ(女性)、カスハラでは30%以上の人が、セクハラにおいては50%以上の人が何もせずに我慢しています。マタハラ(男性)のみ、「会社とは無関係の弁護士や社会保険労務士に相談した」が最も多く、20.8%となっています。

 ハラスメント相談員としては、とても残念な結果です。ハラスメント相談がしやすくなるよう、今後も努力し、工夫していかなければならないと感じています。

※1 過去5年間に就業中に妊娠・出産した女性労働者、及び育児にかかわる制度を利用しようとした男性労働者が対象

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