内部通報窓口(公益通報窓口)の費用はどのくらい?窓口設置と運用費用について解説
2024年2月27日企業内の不正を早期に発見するための内部通報制度の重要性が高まっています。
2022年6月に施行された改正公益通報者保護法においても、従業員数が300人を超える企業は、内部通報体制を整備することが義務付けられました。また、整備していない場合は、行政からの助言や指導、勧告の対象となり、従わなかった場合には企業名が公表される可能性もあります。
上記した通り、改正公益通報者保護法では、内部通報に適切に対応する為に必要な体制を整備することを求めており、具体的にはどのような対応をすればよいか頭を悩ます担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、内部通報体制の整備で中心となる内部通報窓口の設置パターンや費用について解説します。
公益通報者保護法とは?なぜ内部通報窓口が必要?
公益通報者保護法の目的は、従業員等が、自身の働く企業における法令違反や過料の対象となる行為を、企業内部や外部(行政機関や報道機関など)に通報した場合、通報をしたことを理由に解雇や降格、減給などの不利益な取り扱いをされることを防ぐことにあります。
公益通報者保護法においては、通報先として以下を定めています。
- 企業内に設置された通報窓口
- 通報事実について処分や勧告などの権限を持つ行政機関
- 通報することで、問題発生やそれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められるもの(例:報道機関や消費者団体など)
企業内に内部通報窓口を整備することは、不正を発見した従業員が報復や不利益な取扱いを恐れずに通報できる環境整備に繋がり、企業が早期に不正行為を把握し、外部への通報が発生する前に対処できるようになることが期待できます。また、内部通報制度の整備は、取引先や消費者などのステークホルダーからの信頼獲得、並びに企業価値向上や企業の持続的発展の基盤形成にも繋がると考えられます。
内部通報窓口の設置パターン
内部通報窓口を設置するパターンは、①企業内部の窓口(社内窓口)のみ設置するパターン、②外部事業者に委託した窓口(社外窓口)のみ設置するパターン、③社内窓口と社外窓口の両方を設置するパターンの3つに分けられます。
社内窓口を設置している企業では、総務部門や法務部門、人事部門に社内窓口を設置していることが多いようです。社内窓口を設置する場合、担当部門に所属する従業員が担当者となり、通報受付や社内報告等を行うだけでなく、場合によっては不正調査や是正措置等の対応を行うこととなります。
社内窓口のメリットとしては、費用が抑えられる点や社内組織であることから、関係者への相談や通報が迅速に対応できる点が挙げられますが以下のようなデメリットもあります。
まず1点目に、担当者の負担の大きさです。担当者は、通報者への対応から調査、事実確認、是正措置や再発防止策の策定などを、適正な手続きに沿って行う必要がある為、業務的な負担が掛かります。また、その一連の業務を遂行するためには、知識とスキルも欠かせないことから、教育や研修を受ける等の知識習得の負担も発生することが想定されます。さらに、そのようなスキルを身に着けた担当者が退職してしまったり、異動してしまった際には、後任担当者を改めてトレーニングしなければならないリスクも存在します。
2点目に、適正な個人情報保護体制の整備が求められることが挙げられます。社内窓口では、通報に係る情報を厳重に保管することが求められます。従業員等が不正を関知しても、自身が通報したことが他者に知られる可能性があれば、通報ができなかったり、躊躇してしまうことが考えられます。従業員から信頼される社内窓口を整備するためには、通報者を特定することが可能な情報を必要最小限の範囲で共有すること、調査を行う際は内部通報に端を発するものだと関知されないようにすること、通報者を特定しようとする行為をあらかじめ防止することなどの対策が必要となり、担当者はそれらの対策を十分に理解した上での対応が求められます。また、電話による通報を受け付けたり、面談を行う際には、勤務時間外に他の従業員の目につかない場所で行うなどの工夫も必要となるでしょう。
このように、社内窓口のみを設置する場合は、費用を抑えられることや、対応の迅速さなどがメリットではありますが、担当者の負荷や体制の整備の負担が大きくなることが懸念されます。
一方で、社外窓口を設置する場合、弁護士事務所や内部通報代行サービス事業者等の外部事業者に内部通報業務の一部又は全てを委託することが出来るため、上記のような担当者の負担を軽減することが期待できます。しかし、社内窓口の設置と同様に、通報者への配慮は十分に行う必要があります。極端な例を言えば、通報などにより不正が疑われる事象が発生した際、社外の人間が通報を行った従業員に対し聞き取り調査をあからさまに行えば、通報を行った従業員に不利益が発生する可能性があります。
各企業における人的資源や金銭的事情は様々であるとは思いますが、上記したメリット・デメリットの他、従業員の方が通報できる選択肢を提供するという点において、理想的には社内窓口と社外窓口を設置し、双方が連携を取りながら内部通報制度の整備に取り組むことが望ましいと言えます。もちろん、当社が顧客へご提案する際は、当社が提供する社外窓口と共に、顧客にて社内窓口を設置することをお勧めしています。
少し古い調査ですが、2016年に消費者庁が公表した「民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」では、上場企業を含む全国の15,000の事業者に対し、内部通報制度の導入状況や、窓口の設置状況、制度の実効性を高めるために必要と思われる措置などについてアンケート調査を行っています。その中では、通報窓口を社内のみに設置している会社は32.1%、社外のみに設置している会社は7.0%であったのに対し、社内外の両方に設置している会社が59.9%となっています。
内部通報制度における社外窓口の4つのメリット
内部通報の社外窓口は必ずしも設置しなければならないものではありませんが、設置することに多くのメリットがあることも確かです。
まず1点目に、従業員の通報への心理的ハードルを下げることができる点が挙げられます。社内窓口では、自分が通報をしたことが社内窓口の担当者から広まってしまうのではないかという懸念や、匿名で通報したくても電話の声などで自分が誰か明らかになってしまうのではないかという心配もあるでしょう。その点において社外窓口では、通報者の匿名性が確保されるため、従業員がより安心して内部通報を利用することができます。
2点目に、経営陣から独立した通報が可能である点が挙げられます。企業組織の中に設置されている社内窓口の場合、組織の経営陣や幹部社員に関係する問題について、フェアな調査が行われるのか疑念を感じる従業員もいるのではないでしょうか。この課題に対しては、社外窓口の設置は有効に働きますが、その他にも社外取締役や監査機関、顧問弁護士のような外部から企業を監督することができる立場にいらっしゃる方(以下「社外取締役等」)にも内部通報の内容が共有することや、社外取締役当のモニタリングを受けながら内部通報制度が運用されることが考えられます。また、社外窓口からの報告先を社外取締役等に設定することも有効と考えられ、不正が揉み消されたり、重要な情報が隠される可能性を低減できます。
3点目に、対外的にコンプライアンス遵守の取り組みをアピール出来ることが挙げられます。既出の消費者庁による調査報告書では、「他の条件が同じである場合、実効性が高い内部通報制度を整備・運用している事業者(不祥事への高い耐性を有する事業者)との取引を選択したいか」という設問に対し、89.4%の事業者が「はい」と回答しています。このことからも、社内のコンプライアンス体制の実践には社外からも目が向けられており、それらを整備することは、事業を行う上でも有利に働くと言えるでしょう。
最後4点目に、社内の経営資源を割くことなく、専門知識を持った人間に内部通報業務を任せることが出来る点が挙げられます。社内窓口を設置した場合における担当者の負担については、既述の通りです。外部事業者に内部通報窓口業務を委託することで、企業内部の負担を減らすことが出来るだけでなく、教育や研修では補い得ない専門的な知識やスキルを持った外部事業者による対応が可能となります。
内部通報の社外窓口を弁護士事務所に委託する場合の費用感
内部通報の窓口業務を外部委託する場合、弁護士事務所に依頼する方法と、専門事業者に依頼する方法の2つが挙げられます。ここでは、弁護士事務所に依頼する場合のおおよその費用について紹介します。
弁護士事務所に依頼する場合の費用体系は、月額制であることが一般的であり、相場としては、初期費用とは別に月額2万円〜5万円程度から導入が可能です。但し、従業員数や通報件数の実績に応じて料金が調整される場合や、通報対応1件あたりの追加料金が発生する場合もあるため、サービス内容と料金体系をきちんと事前把握しておく必要があるでしょう。
内部通報の社外窓口を専門事業者に委託する場合の費用感とメリット
専門事業者に社外窓口を委託する場合も、弁護士事務所の場合と同様に、従業員数に応じて料金が設定される場合が多いようです。
料金体系は、年額制と月額制のどちらも見られますが、内部通報体制の整備が義務付けられている従業員300人以上の企業の場合、初期費用(相場5万円~10万円)とは別に、年額15万円〜70万円(月額約1.3万円〜6万円)程度から導入が可能でです。但し、設定した通報件数を超えた場合は従量課金される等もあります。
なお、料金体系と共に重要なのは、利用できる通報方法(電話、Web、チャット等)や通報内容の報告方法は各社で異なりますので、導入する企業における運用を可能な限り想定することが、適切な事業者を選定することに繋がることになるのではないでしょうか。
また、こういった事業者の中には、追加で料金を払うことで、職場でのハラスメントや、従業員のメンタルヘルスに関する通報・相談にも対応できるサービスを提供している事業者があります。労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)の施行により、企業はハラスメントに関する相談に対応する体制(以下、ハラスメント相談窓口)を整備することが義務付けられていますので、内部通報窓口とハラスメント相談窓口を合わせて専門業者へ委託することで、委託費用の低減や担当者の負担低減が期待できます。
加えて、既出の消費者庁による実態調査報告書では、内部通報制度を導入している会社の35.7%が「通報というより不満や悩みの窓口となっている」という課題を挙げています。内部通報窓口の運用という観点では課題となりますが、従業員の労働環境を改善する観点では、職場におけるストレスなどの悩みに幅広く対応する社内窓口を設置することは重要となるのではないでしょうか。
当社の取り組み
当社では、公益通報者保護法とパワハラ防止法の両方に対応した内部通報窓口サービス、「ディアログ」を提供しています。このサービスでは、法令違反や行動規範違反などをはじめとした不正の通報と、ハラスメントなどの相談の両方に対応することが可能です。加えて、内容による通報・相談の制限は設けていないため、職場におけるストレスや人間関係、仕事上の悩みなど、幅広い内容を受け付けることができます。
また、内部通報制度に関わる人物が通報や相談の対象となる場合に備え、事前に特別送信先として設定して頂く社外取締役等の別の部門に報告を送信することとなっており、利益相反の観点からも公正な通報が可能になっています。
加えて、寄せられた通報や相談に対し、当社提携弁護士から公益通報に該当有無の確認や法的な観点からの一般留意事項等のコメント取得ができる「通報対応リファレンスコメント」や、不正等が発覚した際の企業として取るべき対応について、危機管理に精通した提携弁護士にアドバイスを受けることができる「危機対応サポート」等の付帯サービスを提供しています。
まとめ
今回は、内部通報窓口の設置パターンや費用をご紹介した上で、社内外からの信頼性の確保や社内費用の削減、通報への適切な対応のためには、適切な内部通報窓口を設置することが重要であることをご説明しました。
また、パワハラ防止法の順守や従業員の労働環境配慮の中で重要なハラスメント相談窓口ですが、内部通報窓口と合わせた運用を行うことでのメリット(費用削減や担当者負担の軽減)をご紹介しました。
内部通報制度における社外窓口について、情報収集や検討を進めている担当者の方は、是非当社にお声がけ頂ければと思います。
当社のサービスを網羅したサービス資料を差し上げます。
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