Vol.119 メンタルヘルス

エゴグラムをコミュニケーションに活かす

 企業の皆様は、様々な研修を受ける中で、「自分を知る」ための検査をした経験はないでしょうか。企業向け研修などで実施される心理検査は、交流分析を基本とした「エゴグラム」、もしくはユングのタイプ論をもとにした「MBTI」のどちらかが多いようです。今回はダイヤル・サービスが行う研修でもよく扱う「エゴグラム」についてご紹介します。

 エゴグラムはアメリカの精神科医であるエリック・バーンにより提唱された理論で、基本となるのは交流分析です。同氏は、人間が抱える悩みの大半は人間関係によるものであり、人間関係がうまくいけば、多くの悩みは解消できると考え、交流分析を心理療法として確立しました。
 エゴグラムでは、人間には親(P:親と同じように考え行動する部分で、自他ともに厳しく律するCPと優しく支えるNPとに分かれる)の部分、大人(A:現実に対応する冷静で大人の思考・行動・感情)の部分、子ども(C:思うまま自由に振る舞うFCと、周囲の大人を気遣う素直なACに分かれる)の部分があり、それらを「自我状態」と呼んでいます。

 約50問の質問に「はい」「いいえ」「どちらでもない」で回答し、その結果をグラフ化します。自分の自我状態を知ることで、コミュニケーションや人間関係が円滑になると言われています。それは、「自分がどう思われているのか」「自分は長所だと思っているところが他人から見たら短所になっているのではないか」など、人間関係においてトラブルの要因となる事柄について、何をどう気を付けるべきかが明確になるからです。その点に気を配ることで、無為な衝突を回避することもできます。
 例えば、CPが強い人は「厳しい人」と批判されたり、「責任感が強い人」と信頼を得られたりします。NPが強い人は「思いやりのある人」と思われることもあれば、「おせっかい」と思われることもあります。それぞれの自我状態は良い面と悪い面の両方を持ち備えているのです。結果を活用するには、低い自我状態を上げていくアプローチが一般的です。

 エゴグラムは、インターネット上に無料で公開されているので気軽に試すことができます。研修などで利用する有料版は、東京大学医学部が開発した「TEG東大式エゴグラム」で、エゴグラムを日本人に最適化したテストです。簡易テストに分類されますが、病院の検査でも利用され、信頼性が高いテストです。
 ハラスメント防止のためには日ごろのコミュニケーションが必要、と言われますが、コミュニケーションを円滑に進めるためには自分を知り、相手を知ることが大切です。自分と向き合い、内省を深めるきっかけにもなるエゴグラム。機会があれば試してみてはいかがでしょうか。

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