Vol.107 ハラスメント

アンコンシャス・バイアスについて考えよう

 先入観や思い込みによって偏った見方をしてしまうことを指す“アンコンシャス・バイアス”という言葉を聞いたことがありますか。

 内閣府男女共同参画局による調査(※1)では、性別役割をどう思うかについて、男女ともに「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」が一番高いという結果でした。また、「男性は結婚して家庭をもって一人前だ」といった「男性は~べきだ」という項目が全体的に男性の方が高い割合となっていました。この結果から、無意識の偏見は、「〇〇だから~だろう」という個人の判断基準として定着し、少なからず誰にでもあると思われます。

 なぜアンコンシャス・バイアスが生まれるのでしょうか。それは、個々の経験に紐づく物事への価値づけがなされているからだと考えられます。様々な環境や集団に囲まれて生活しているあいだに、知らず知らずのうちに偏った価値観が意識に刷り込まれてしまうのです。例えば、高度成長期(S30年~S48年頃)は「男性雇用者と無職の妻」の世帯数が「共働き」世帯数を上回っていました(※2)。社会的風潮としても「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という価値観は、多くの人が違和感なく抱くものだったと思われます。
 同じような社会的経験を持つ人が多い集団に属すると、周囲に合わせようとする心理が働く“同調性バイアス”が生じやすくなります。これまでの経験や見聞きしたことを思い出し「普通は~だ」「こういう人は~だろう」と自分なりに解釈して、判断してしまいがちです。アンコンシャス・バイアスは、それ自体悪い事ではありません。しかし、無意識に相手を傷つけてしまうこともあるのです。

 特に、管理監督者のアンコンシャス・バイアスは職場に悪影響をもたらすこともありえます。例えば、上司が「育児は妻に任せ、男は仕事に専念すべき」「育児中の女性に重要な仕事は担当させられない」といった考えの持ち主だったら、周囲に自分の価値観を無意識に押し付けることになりかねません。そういった職場環境では、社員や部署全体のパフォーマンスを低下させる可能性があります。また、ハラスメントの温床になったり、イノベーションが生まれにくくなったりするかもしれません。

 アンコンシャス・バイアスがあることに自分ではなかなか気づけないものです。そのため組織が主体となって学習する機会を設け、対処することが大切です。まずは自分にどのような先入観や思い込みがあるのか気づこうと意識することから始めてみませんか。多様性が認められる組織は、過ごしやすい空間につながります。インクルーシブ(包摂的)な社会に近づく一歩として、ぜひ取り組んでみてください。

※1 内閣府男女共同参画局「令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査結果」
 https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/seibetsu_r04/01.pdf
※2 内閣府男女共同参画局「令和3年版 男女共同参画白書」
 https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r03/zentai/index.html

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