Vol.10 労働制度・権利

欠勤とは何か、休業や休職との違い、注意点、よくある疑問を併せて紹介

2023年8月15日

会社の稼働日に休む場合、休みの取り方には、欠勤、年次有給休暇、休職など様々な方法があります。しかし、労働者が休みを取得する際に、どの方法で申請するべきか迷っているケースがあるようで、人事・労務の担当者の中でも、休みについての質問を受けた経験をお持ちの方が多いのではないでしょうか。ここでは、欠勤をメインテーマに、その定義、休業、休職との違い、ノーワーク・ノーペイの法則、欠勤控除、欠勤時の注意点、ケーススタディについてお伝えしていきます。

欠勤とは

一般的に欠勤とは、勤めている会社の稼働日に休むこと。「休む」という点では年次有給休暇(以下、有給休暇)と同じですが、その大きな違いは、給料が支払われるかどうかというところにあります。欠勤は給料が支払われない休み、有給休暇は給料が支払われる休みと覚えておきましょう。また、法律上の定義についても、欠勤と有給休暇は異なっています。欠勤については、法律上明確な定義がないのに対し、有給休暇は労働基準法第39条で定められている労働者の権利です。有給休暇を労働者が行使することで、給料を得ながら休みを取得することが可能となっています。
欠勤については法律上の定義はありませんが、就業規則では欠勤の扱いについて明記しておくことが必要です。なお、法律上の定義がないため、就業規則に必ず明記しないと違反になるということはありませんが、労使問題に発展しないよう、労使間で明確にすべき点を記載しておくことをおすすめします。一般的には、下記のような点についてクリアにしておくといいでしょう。

【欠勤の扱いについて、就業規則に記載しておきたい内容】
●いつまでに届け出る必要があるか(前日もしくは当日の始業時間までなど)
●届出の方法について(誰にどんな方法(電話、メール、チャットツール、会社指定の申請書など)で伝えるのかなど)
●届出の内容(理由、欠勤期間や日数など)
●本人が記載し、提出すべき書類について(実際休んだ期間を記載した欠勤届など)
●無断欠勤した場合の会社としての扱いや処分
●診断書の提出が必要かどうか(病気やけがで欠勤した場合、感染症に感染した場合など)
●欠勤では給料が発生しないこと
●欠勤届出後の措置について(残数があり、上長が認めれば年次有給休暇への切り替えが可能など)
●欠勤から長期休暇への切り替えについて(欠勤が長期に渡り、その理由が会社の認めるものであれば、協議の上、長期休暇へ切り替えることがあるなど)
●正当な理由のない欠勤が続く場合の対応や処分(注意や指導を行う、指導や注意によって改善されない場合は解雇事由になることもあるなど)

休業、休職との違い

ここでは、「休み」という視点から、休業や休職について見ていきましょう。
休業とは、「会社側に事業存続の意思、労働者に働く意思があっても、働ける状況にない場合」に発生するお休みのことです。
休業になる理由は、会社側にあるケースと労働者側にあるケースがあります。会社側の理由として多いのは、「業績の悪化」、「外的な要因によるもの(業務上必要な原材料が入手困難になった、自然災害によって工場が操業できなくなった)」などです。こうなった場合、業務がストップするのでいわゆる通常業務は発生しませんが、県税事務所、市区町村、税務署などに、休業する旨や「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」、「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出する必要があります。また、法人としては存続しているので、休業中であっても会社としてやるべき手続きは継続して行わなくてはなりません。例えば役員の改選などがあった場合は、役員変更登記の提出を通常通りすることが必要です。うっかり忘れてしまうと、義務を果たさなかったとして過料を科せられることもあるので注意しましょう。休業期間中の給料については、労働基準法第12条3項3号によって、平均賃金の60%以上の休業手当を支払うことが義務付けられています。なお、天災その他の不可抗力による休業の場合は、これに該当しません。一方、労働者の理由としては、「家族の介護や看病」、「育児」、「体調不良」などが挙げられます。これらは自己都合となるため、基本的には給料は発生しません。

休業と休職は明確に区分けがしてあるわけではなく、企業によって表現が分かれているというのが実情です。ただし「休職」という表現は、労働者側の長期休みの取り方のひとつとして使われることが一般的となっています。休職の理由で多いのは、先にお伝えした休業と同様に「家族の介護や看病」、「育児」、「体調不良」など。欠勤がきっかけとなるケースが目立つようで、欠勤を繰り返し取得している中で、あまり出勤できないという状態になると、労働者の希望により、休職へ移行していくというのが多く見られます。そうは言っても、「欠勤が続く=休職しなければならない」と法律で定義されていないこと、また、欠勤が続くことに対しての感覚の違いなどから、欠勤から休職への移行を検討するタイミングを計るのはなかなか難しいものです。最終的には対象の従業員の意思を尊重することにはなりますが、「欠勤がどのくらい続いたら休職について話し合う」というのは、人事・労務の担当者間では決めておいたほうが無難かもしれません。

有給休暇と公休の違い

先に簡単に触れましたが、給料が発生する有給休暇は労働基準法第39条で定められている労働者の権利で、法律上は「年次有給休暇」とされています。労働基準法第39条の前文と➁の条文には、「【前文】使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。② 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。」と、取得条件や取得可能な日数、毎年の加算日数などについて記載しています。

下記は前文及び➁の条文内容をまとめたものですので、参考にしてみてください。
【前文、条文のポイント】
●会社は、全労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、雇用後6カ月経過日から年間10労働日の有給休暇を与える義務がある。
●1年6カ月以上継続勤務した労働者には、1年ごとに有給休暇の日数を指定数加算する。
●有給休暇は連続もしくは分割して取得できる。

【雇用後6カ月経過日から起算した継続勤務年数と有給休暇の加算日数】

雇用後6カ月経過日から起算した継続勤務年数加算日数
1年1日
2年2日
3年4日
4年6日
5年8日
6年以上10日

労働基準法第39条では、他にも有給休暇について記されていますが、ポイントとして知っておきたいのが、2019年に義務化された下記⑦の条文です。
「⑦ 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。」
ここでは、年間10日以上有給休暇が付与される労働者には、確実に5日間の有給休暇を取得させなければならないとされています。これは、使用者(会社)の義務になるのでしっかり認識しておくようにしましょう。

休みのひとつとして公休がありますが、これは会社が定めた休日のことです。有給休暇では給料が発生するのに対して、公休は給料が発生しないという点が大きな違い。また、有給休暇は個人で休む日を決めるのが原則ですが、公休は就業規則などで事前に定められている休日です。会社によって設定されている日は異なりますが、具体例としては、土曜日・日曜日・祝日や会社が独自に定めている日などです。労働基準法35条では法定休日(最低日数は週に1回または4週に4回)について定められていますが、そこに会社が設定する所定休日を組み合わせた休日というと理解しやすいかもしれません。
公休は原則として労働義務がない日ですが、正当な理由で労働者が出勤することになるケースもあるかと思います。そういったケースも想定して、休日労働をさせる場合は労使間で「時間外労働・休日労働に関する協定書」を締結し、「36協定届」を労働基準監督署に提出する必要があります。また、公休では給料が発生しないとお伝えしましたが、これは労働しなかった場合のみ該当します。正当な理由で出勤となったケースでは、休日出勤手当、もしくは、振替休日を取得させるなどの対応をしなくてはなりません。さらに、振替休日は年度での繰り越しはできないことになっていますが、年度内に取得とはいっても、先延ばしにすると取り忘れが生じることになります。こういったことが起きないよう、できるだけ早めに振替休日を取得させるようにするほか、人事・労務の担当者としても休日労働の実態をしっかりと把握し、振替休日が未取得の場合は、本人にアナウンスするようにしましょう。中には業務が忙しいと、サービスで休日労働をしてしまうケースもあるようです。仕事熱心な態度には感心できますが、これは見過ごしてはならないこと。管理者を含め、日ごろからルールとしての理解をすすめ、定着させるようにしておくことが重要です。

ノーワーク・ノーペイの法則

ノーワーク・ノーペイの法則とは、働いていないのであれば給料は発生しないという考えです。この法則にそってみると、欠勤した場合は、その分の給料を差し引いても違法となることはなく、欠勤した当事者には賃金の請求権はありません。なお、有給休暇はそもそも給料の発生する休日と法律で定められているため、例外となります。会社都合の休業も労働基準法第12条3項3号によって、平均賃金の60%以上の休業手当を支払うことが義務付けられているので注意しましょう。
ただし、ノーワーク・ノーペイの考えはあくまでも給与計算の原則であって、法律で定められていること以外の判断は各会社に委ねられています。

欠勤控除について

ノーワーク・ノーペイに則った場合、会社には欠勤控除が認められています。これは、働かなかった分の賃金を控除する権利のことで、控除額は毎月の月給をもとに計算されます。また、欠勤だけでなく、遅刻や早退なども欠勤控除の対象です。
ただし、欠勤控除についての規定は労働基準法にはありません。よって、欠勤控除の方法については、会社ごとに定めることができます。

➀分母となる、日数の定義を決める
欠勤控除の計算を行う際には、まず計算の分母となる日数をどのような定義にするのか決めていきます。なお、一般的なのは下記のようなものです。
●該当する労働者の1カ月平均所定労働日数
●該当する労働者の欠勤該当月の所定労働日数
●どのようなケースでも日数は固定
●該当する月の暦日数
どの分母を用いても法律上問題はありませんが、労働者や月によって分母が変わるというのは、後になってトラブルになる可能性があります。よって、どの日数を分母とするのかは、担当部門でしっかり決めておくようにしましょう。

➁分母が決まったら、計算式にあてはめて計算する
分母が決まったら、一般的には下記の方法で計算します。なお、今回は欠勤控除の計算なので、有給休暇ではなく欠勤、もしくは、遅刻や早退でも有給休暇を使っていないというのが前提です
●欠勤控除(1日)※1日欠勤した場合=固定給÷所定労働日数
●欠勤控除(1時間)※遅刻や早退をした場合=固定給÷所定労働日数÷1日の所定労働時間
→ここで出る解は1時間の控除額のため、それを超える場合は遅刻や早退した時間数を掛ける必要があります

では、実際に計算してみましょう。

【例1】Aさんが風邪を引いて1日休んだ場合
●固定給:20万円
●所定労働日数:20日
20万円(固定給)÷20日(所定労働日数)=1万円(欠勤控除(1日))・・・Aさんの欠勤控除

【例2】Bさんが寝坊して2時間遅刻した場合
●固定給:20万円
●所定労働日数:20日
●1日の所定労働時間:8時間
20万円(固定給)÷20日(所定労働日数)÷1万円(欠勤控除(1日))÷8時間(所定労働時間)=1,250円(1時間の欠勤控除)
1,250円(1時間の欠勤控除)×2時間(遅刻した時間数)=2,500円欠勤控除(2時間)・・・Bさんの欠勤控除

中には、遅刻が1分であっても10分であっても、30分として欠勤控除をするというような会社もあるようですが、この考え方には注意が必要です。
先ほど計算した1,250円(1時間あたりの欠勤控除)をもとに計算をしてみると、下記のような解が得られます。

●1分あたりの欠勤控除
1,250円÷60分=約20.9円
●30分に換算した欠勤控除
1,250円÷60分×30分=625円※1,250円÷2でも可

実際は1分しか遅刻していないのに、会社のルールで計算すると、600円以上の差が出ていることが分かります。「1~30分の遅刻や早退は、すべて30分とみなす」など、就業規則に記載しておくことはもちろんのこと、社員にもこの規則を認識してもらうことも重要でしょう。この点が曖昧だと、給与明細を発行した際に、計算が合わないなどの問い合わせが入ってしまうことがあります。

欠勤する時の注意点

急な体調不良や突発的な用事などで、欠勤する労働者がいるのは仕方のないことでもあります。しかし、欠勤するにしても、ある程度のマナーは遵守してもらう必要があります。就業規則に記載可能であれば「欠勤する時の注意点」を明記するのもいいでしょう。また、就業規則ではなく、社内に掲示したり、社内報や社内メールなどで注意点としてお知らせしたりするというのもいいかもしれません。

【欠勤する時の注意点とその解説】
●欠勤する場合は、できる限り事前に連絡をしましょう
「起きたら体調が悪かった」、「出勤前に、子どもが発熱した」など、出勤日に発覚した場合はこれに限りませんが、欠勤することが事前に分かっている場合は、決まった時点で連絡をすることが大切です。1人休むということは、出勤している人に欠勤した人の分の業務負担がかかるということ。事前に業務の調整ができるように、早めに伝えることを促しましょう。

●欠勤理由は明確に
有給休暇は取得することが労働者の権利なので、具体的な理由を伝える必要はありません。しかし、欠勤は本来出勤するはずの日に休むことになるため、休む理由を伝えるという配慮は必要です。この点は意外と認識が低いので、しっかり伝えるようにしましょう。

●原則として、欠勤は自動で有給休暇にはなりません
有給休暇の日数が残っていたとしても、原則は有給休暇の申請をしないと取得することはできません。ただし、会社によっては急な休みの場合、口頭の確認だけで有給休暇に変更してくれるケースもあります。また、有給休暇の残数があっても、必ず有給休暇に変更しないといけないわけではありません。

無断欠勤するとどうなる?

会社と雇用契約を結ぶ労働者が、無断で欠勤するというのは許されることではありません。上司や同僚、取引先からの信頼を失うだけでなく、減給に値する行為と言っても過言ではありません。また、通告や指導をしても無断欠勤が度重なる社員には、損害賠償を請求することが可能なケースもあります。ただし、無断欠勤をした労働者に対して、どのような対応をするかは就業規則に明記しておく必要があります。「規則にないのに、減給なんておかしい」などと言われないように、備えておくようにしましょう。

欠勤に関するケーススタディ

ここでは、欠勤に関するよくある質問や事例をまとめてみました。ぜひ参考になさってください。

Q.欠勤が理由で解雇できる?
A.一度欠勤したからといって解雇はできません。欠勤が度重なる場合や欠勤の理由が曖昧など、信用をなくすような態度をとっている労働者であっても、いきなり解雇通告するのはNG。まずは話し合いをしてみることから始めます。それでも改善されない場合は、注意や指導を繰り返し行います。しばらくしても改善の見込みがない場合は、解雇できる可能性はあります。ただし、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないと無効になります(労働契約法16条)。

Q.休みを取りたいが、欠勤しづらいという相談を受けたら?
A.まずは欠勤したい理由のほか、なぜ欠勤しづらいのかをヒアリングします。その原因が分かったら、その原因を取り除くことから始めます。中には、社内の問題が潜んでいることもあるので、できる限り丁寧にヒアリングするようにしましょう。

そのほか、ダイヤル・サービスの相談窓口に寄せられた事例を紹介したいと思います。
<まずは社内でのコミュニケ―ションをしっかりと~ダイヤル・サービスの事例より>
ダイヤル・サービスでは、上司が嫌で休みたい、店舗に行きたくないという相談を第三者窓口として受けることがあります。また、「自己都合ではなく、欠勤、遅刻、早退をしているのは働く環境が悪いせいなので、会社にいけなくても欠勤扱いにしないでほしい」と従業員から言われたという、人事・労務の担当者から、対応方法のアドバイスを求められたこともあります。
欠勤に関しては、「自己都合ではない」という従業員の主張と、「自己都合だろう」という会社側の訴えで、話が平行線をたどることも多くなっています。しかし、双方でしっかりとコミュニケーションを取ることで解決することもあります。そこに気付くためにも、第三者窓口を利用してみることはおすすめです。

法を遵守し、しっかりとした備えを

欠勤についての理解は進んだでしょうか。やむを得ない理由で欠勤する労働者もいると思いますが、会社側としては法律を遵守するほか、問題に発展しそうと想定できる部分に関しては、備えておくことが重要でしょう。

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