導入事例

大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社

事業内容

全国で温泉旅館、ホテル、温浴施設、テーマパークの運営事業を展開(全国39施設)

ホットライン利用対象人数

約3,500名

「言えなかったことを言える」環境が整い 約40拠点で働く従業員の拠り所ができました

「日本古来より親しまれている温泉を通じて、お客様を笑顔にする」をモットーに、日本全国39拠点にホテルや旅館、温泉テーマパークなどを展開する大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社。「大江戸モデル」という業務効率化とサービス向上を両立するチェーンオペレーションによってリーズナブルな価格を実現していることが、幅広い年齢層から支持を集めている要因です。

そんな同社では、各拠点で正社員・アルバイト・パートとさまざまな雇用形態に加え、幅広い年齢層の従業員が在籍。不満の相談やハラスメント通報の受け皿としてダイヤル・サービスの「企業倫理ホットライン」を活用しています。ホットライン導入に至った詳しい経緯や、サービス活用状況について伺いました。

多様な雇用形態の従業員がいるからこそ、安心して働ける環境の構築が不可欠

経営管理本部 人事総務部 部長 加藤崇晶様

ダイヤル・サービスの「企業倫理ホットライン」を導入された経緯について教えてください。

当社は業務効率化とサービス向上を両立させるため、「大江戸モデル」という独自のオペレーションシステムを導入しています。「仲居やボーイによるサービスを提供しない」「荷物の運搬や布団の上げ下げをお客様ご自身にお願いする」などのルールを設けることで、高品質な利用体験・宿泊体験をリーズナブルな価格でご提供するというのが同モデルの具体的な内容です。オペレーションの浸透は当社の強みではありますが、一方で従業員のマネジメントには課題を抱えていました。指揮系統が確立されているため、管理者の指示を配下のスタッフが粛々とこなすだけの「主従関係のマネジメントライン」に陥りがちだからです。

当社にはさまざまな雇用形態や年齢層の従業員が在籍しているので、それぞれのスタッフに合わせたマネジメントが求められます。また、立場の異なる従業員がそれぞれの悩みを安心して相談できる場所や窓口を提供しきれていない面もありました。そうした要因もあり、現場ではコミュニケーションエラーが少なからず発生しています。こうした管理やコミュニケーション部分の課題を解決するため、全社的にコンプライアンスを強化する流れになりました。

また、当社は全国のホテルや旅館などのM&Aを繰り返して事業拡大をしてきた会社です。さまざまな企業文化が集積して「大江戸温泉物語」という会社が成り立っていることから、内部統制が容易ではないという側面もあります。そのため、コンプライアンスと企業ガバナンスの双方を強化するための取り組みの一環として、ダイヤル・サービスさんの「企業倫理ホットライン」を導入したのが経緯です。

従業員間のコミュニケーション問題に関する詳細を教えてください。

当社独自のオペレーションシステムである「大江戸モデル」は、業務の効率化やリーズナブルな価格帯での宿泊・利用を実現しました。一方、オペレーションが確立しているゆえに、従業員間のコミュニケーションが「この仕事をやってください」「対応します」といった一連のやり取りに終始してしまうケースが多々あります。

そうなると従業員同士が協力し合い、自分たちで考えて問題を解決する風潮や文化が根付きにくくなります。その結果、何かトラブルがあった際にメンバー間で適切な議論や対策を練ることができないなど、現場での連携不足が散見されました。こうした通常業務で起こり得るコミュニケーションエラーを改善する必要性を感じています。

従業員間にこの種の“主従関係”ができあがってしまうと、次に危惧されるのは管理者によるパワハラなどのリスクです。ホットラインを導入した経緯には、「言えなかったことを言える場」を社内に設けることで、ハラスメントのまん延を防止する狙いもありました。

同業他社のサービスがある中で、ダイヤル・サービスを選ばれた決め手は何でしょうか?

当社はたくさんのお客様をお迎えしている関係で、業務の比重がどうしても接客サービスに傾きがちです。日々管理・マネジメント面の強化に対応していますが、長年課題に感じてきたマネジメント問題がそう簡単に変わるものではありません。従業員が働きやすいよう環境を整備したくても、中には支配人レベルの個人マネジメントでは解決できない問題もあるでしょう。さらに、支配人自身がパワハラや不正告発の対象になるケースももちろんあります。

また、企業としては投資ファンドの株主化が控えており、将来的な上場の可能性を考慮して、内部統制やマニュアルの整備を進めることが必須でした。ダイヤル・サービスさんとご縁が生まれたのは、まさに企業ガバナンス強化を急いでいる最中だったのです。

当社でもホットラインサービスの調査を進め、担当者さんのお話も伺う中で、ダイヤル・サービスさんなら従業員の相談を事務的ではなくコンサル的な視点で聞いてくれる期待感がありましたね。ハラスメントや不正に気付く従業員の受け皿になってもらいたいと思い、最終的な導入に至りました。

<社内周知用に制作したオリジナルポスター(下写真)>

ダイヤル・サービスの導入によって、どのような変化がありましたか? 通報を受けた際の窓口の運用実態や体制についても教えてください。

最大の利点は、「企業内で不正を認識し、迅速に対応すること」「従業員の不満をなくし、気持ち良く働いてもらえる環境を築くこと」を実現できた点です。それができないと、社内の問題をSNSで拡散されるというリスクもゼロではありませんから。社内の自浄作用を機能させてくれたダイヤル・サービスさんには感謝しています。

“最大の利点は、「企業内で不正を認識し、迅速に対応すること」「従業員の不満をなくし、気持ち良く働いてもらえる環境を築くこと」を実現できた点です”
加藤崇晶様

なお、実際に通報があった際には、私を含む4名の社員が対応しています。基本的には人事総務部の社員と私、その部下とで一時的な方針を決め、この問題にどう対処するかをすり合わせます。現場の責任者である支配人が対応できる場合は、通報者へのヒアリング等、具体的な指示を出します。支配人自身が通報の対象だった場合は、本部にヒアリングの指示を出し、初期対応を進めるというのが基本的な流れです。

地道な対応を続けた結果、通報内容にも変化が見られるようになりました。以前はハラスメント問題の相談が主流でしたが、今では不正や企業倫理に関する通報の割合が増えました。なので、対ハラスメントの取り組みを進めることで、労務環境は改善に向かっていると実感しています。

飲食・宿泊サービスを展開されている御社は、コロナ禍で大きな影響を受けたと思います。その際、従業員の不安にはどう対処したのでしょうか?

コロナ禍では、まず当社のメインサービスのひとつであるバイキング(ビュッフェ)が中止になりました。「高齢者の方が重症化しやすい」という情報が出てからは、2020年4月の緊急事態宣言と同時に休館を余儀なくされ、夏頃までほとんど営業できない状態が続きました。

こうした流れの中で、従業員の間に「この先どうなるんだろう」という不安が伝染していたことは事実です。しかし、私たちには「コロナが終息すればお客様は戻ってくる」という考えがあったので、従業員への休業補償としての休業手当は平均賃金の100%を支払っていました。メンタル面の不安に関しては、メンタルヘルス専門の窓口を案内したり、資料を作成して配布したりするなど、さまざまな対策を講じました。手厚い対応を心がけたのは、厳しい中でも雇用を守り、営業が再開したら従業員にコロナ禍前と同じように気持ち良く働いてほしいと思ったからです。

従業員が安心して通報できる環境は整っていると思いますか? また、問題解決のための対策についても教えてください。

通報できる環境は整っていると思います。本当に不正があると判断した場合は、最終的に賞罰委員会で対処します。懲戒の告知も行い、再発防止のために全社的に動くこともしているので、従業員の心の拠り所を築けているという自信はあります。

しかし、通報内容によっては「現場のラインで解決してください」と指示するケースも少なくありません。ただ、そうすると通報者側は「対処してくれなかった」「秘密をバラされた」と感じることもあるでしょう。私たちは問題解決のために最善だと考えて指示を出しているのですが、残念ながらそこを正しく伝えきれていないケースはまだありますね。

また、ハラスメントに関する研修会も毎年実施し、定期的な意識づけを心がけています。しかし、どこまで認識してもらえているかについては正直あまり自信がありません。「相談内容の秘密は守ります」「通報者が不利益な扱いを受けることはありません」とも伝えているのですが、先ほどお話しした負のイメージが先行してしまっているのが懸念点です。

また、できれば名前を出して通報してほしいこと、メールで通報を入れる際は、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どうして」「どのように」行ったのか、5W1Hを整理して報告することを各所にお願いしていて、テンプレートも用意しているのですが、その徹底が進んでいない点も課題として捉えています。

従業員から相談を受けるスタッフの方も専門知識をお持ちでしょうか?

以前は人事関連では労務を、総務関連では不正などに関する内部統制を、といったように業務を切り分けていたのですが、現在は統合して人事総務部が対応しています。また、本部内に各現場と密接に絡んでいる業務管理部があるので、連携しながら対応しています。専門知識を持っている人材こそいませんが、ダイヤル・サービスさんのような外部サービスを導入することで、従業員が相談しやすい体制を構築できています。

社内にハラスメント対応のノウハウがあまりない中、専門知識を持つ人材の育成は大きな課題だと感じています。特に若い女性従業員が相談をする際には、なるべく同世代の人が対応したほうが良いので、人材の育成は急務です。

窓口を運営する中で、ダイヤル・サービスを使っていて良かったと思う点を教えてください。また、継続利用している理由は何でしょうか。

私自身が直接通報の電話を受けることもあるのですが、長い方だと30分くらいお話をされることもあります。また、名前を聞き出すために「不利益なことは一切ありません」と説得するにも非常に時間がかかります。電話が終わったあとには通報内容をレポートにまとめるという作業も残っているので、通報ひとつ受けるにしても業務負担は少なくありません。

一方で、ダイヤル・サービスさんを介せば、通報者への聞き取りや内容についてのレポート化も対応してくれます。ダイヤル・サービスさんが手を動かしてくれた分、私たちはコア業務に集中できますし、正確なレポートを出していただけるため、内容把握の面でも非常に助かっています。また、歴代の担当者さんは細かい気配りをしてくれるので、こちらも安心してお話ができます。定期訪問や対面でのフィードバックで情報共有が受けられる点も、大きな安心材料ですね。

ダイヤル・サービスさんを継続利用している理由は、企業として適正な体制を築くうえで「外部が絡む仕組み」は維持していく必要があると感じているからです。もしハラスメントの通報があっても、内部だけで対応すると、少し言い方は悪いですが“もみ消し”のようなことが起きるリスクもゼロではありません。リスクヘッジのためにも、第三者である外部サービスを使い続けることは必須だと感じています。

今年の6月に改正公益通報者保護法が施行されました。こういった動きから御社が認識されていることや、従業員を守る取り組みとして注力したい部分は何ですか?

取り組みとして必要なのは、管理職の教育だと思います。現場サイドの管理者には、通報があった際に「なぜそんなことをするのか」と良い顔をしない社員もいるからです。通報者は勇気を出して私たちに情報を提供してくれているので、そうした方に適切な対応ができるよう教育を徹底していきたいです。

従業員を守るために、特別な取り組みや改革は必要ないと私は思っています。ハラスメントに関する基本的なルールを、法律に従って繰り返し学習していくこと――これが一番大切なのではないでしょうか。

コンプライアンス強化に向けたメッセージは、日頃から発信していますか?

先ほど、ハラスメント研修を毎年開催しているお伝えしました。その際は厚生労働省の資料をベース作成した冊子を参加者に配布し、「トップメッセージ」という形で社長の言葉を掲載することで、コンプライアンス強化への意識づけになるよう取り組んでいます。

実際に懲戒事案が発生した際も、迅速な周知を欠かしません。「どんな不正があったのか」「不正が発生した背景」「再発防止のため何をすべきか」という点を、各現場の朝礼などで周知するようにしています。支配人に対しても私のほうから問題の経緯をオンラインで説明するなど、従業員全体にコンプライアンスに関する取り組みを行っています。

そのほかの取り組みとして挙げられるのは、正社員に対して毎月第一営業日に開催しているオリエンテーションです。全国の現場をオンラインでつなぎ、倫理綱領などコンプライアンスに関する説明やホットラインについての説明も展開しています。パートタイムの従業員も例外ではありません。支配人開催のオリエンテーションに参加してもらう中で、労務契約書の中に通報窓口が掲載されていることや窓口の電話番号などの周知を進めています。

「会社が通報に対し真摯に対応している」点を常日頃から周知し、さらに「何かあったら窓口に相談してください」とプラスで伝えることにより、すべての従業員により安心して働いてもらうことが当社の願いです。

今後、「企業倫理ホットライン」に期待したいこと、改善してほしいことがあれば教えてください。

できれば、名前を出して通報できるようなシステムを提供していただきたいです。通報する側は匿名にしたがるので限界はあると思いますが、ヒアリングによって問題の詳細を把握し、改善策をしっかり練るためにも、通報者の名前と連絡先はできる限り知りたいと考えています。

また、メールでの通報だと送信者の思い込みが大きい傾向があるので、そこでも改善をお願いできればと思います。オペレーターの方が相手と会話ができないため難しいとは思いますが、正確な状況を把握するために改善が進むと嬉しいですね。

(内容は2022年9月現在)

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