無病息災を願う~夏越ごはん~
<Q>
家族で茅の輪くぐりをしに神社にお参りに行ったとき、「夏越ごはん」と書かれたポスターを見かけました。初めて知ったのですが、どのようなものでしょうか。いわれがあれば教えてください。
<A>
夏越の祓(なごしのはらえ)に行かれたのですね。古来、日本では半年を1年としており、6月30日と12月31日はそれぞれ年末でした。6月の晦日(みそか)の夏越の祓と、12月の大晦日(おおみそか)の年越しの祓では、神社に茅の輪(ちのわ)が置かれます。茅(ちがや)という草やわらで作られた大きな輪で、それをくぐる行事です。新年を迎えるにあたり、茅の輪をくぐって身についた汚れや災厄を祓い(はらい)清め、無病息災を祈りました。
茅の輪や夏越ごはんは蘇民将来(そみんしょうらい)という人物についての伝承神話がルーツとされています。スサノオノミコトが旅の途中で泊まる場所に困っているときに、貧しいながら一夜の宿と粟(あわ)飯でもてなしてくれた蘇民将来に感謝して、厄除けの力がある「茅の輪」を授けたと伝わっています。茅の輪のおかげで疫病から逃れられ、子々孫々まで繁栄したことから、現在でも「蘇民将来子孫家門」と書かれた護符やお守りなどを見かけます。
夏越ごはんはこの粟飯に由来し、茅の輪をイメージした丸い食材をごはんにのせたものをそう呼んでいます。「ごはん(できれば雑穀入り)」と「茅の輪にちなんだ丸い食材」という2点を押さえれば、特に決まりはありません。イカや玉ねぎのリング揚げ、この時期が旬のゴーヤやパプリカを使ったカラフルなかき揚げをのせた丼など、発想は自由です。
もともと夏越の祓には決まった行事食というものはありませんでした。地域によっては受け継がれた食べ物があり、京都では和菓子の「水無月」を食べますが、関東ではそれほど浸透しませんでした。近年、公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構が日本の文化とお米を見直すきっかけとして提案したのが、夏の新行事食「夏越ごはん」なのです。東京を中心として広がりつつあります。
米食が見直されている今、ご家庭でオリジナルな夏越ごはんを作って、楽しみながら無病息災を祈ってみるのはいかがでしょうか。