Vol.40 ハラスメント

私の実践:心の使い方

 どんな仕事でも、やり終えるまでには様々な心の動きがあるものです。その際に偏った心の使い方をしていると、メンタル疾患に陥る可能性もあります。例えば、私がこのコラムを書くにあたっても、様々な心の動きがありました。そこで今回は、私の体験を紹介することで、心の使い方のコツをお伝えします。

 まず、そもそも今回はコラムの内容が決まらず、時間ばかりが過ぎていきました。切羽詰まった状況になると、思考がどんどん回転します。
 「きっと私は締め切りまでに書くことができないだろう。締め切りを守らないと評価が下がるだろう。そうなると働きづらくなり仕事を辞めることになるかもしれない」
このような思考がひとりでに動き出し、私の心を支配しました。焦れば焦るほど視野が狭くなり、後半はほとんど妄想に近い内容になっています。
 思考は感情に影響します。私はこの思考によって、“不安”という感情を感じました。不安などのネガティブ感情は、怒りの元になる一次感情であると言われています。私も不安によって怒りが溜まってイライラした状態になり、些細な出来事でパートナーと喧嘩し、怒りをぶつけてしまうという結果に…。このままでは家庭が崩壊してしまいます。

 このまま強い感情を抱えていては身動きが取れません。そこで私が取った戦略は、“不安”という感情のレベルを下げることでした。そのためには、自分の心の中に何が起こっているのか観察する必要があります。心の観察方法としてはマインドフルネスが有名です。マインドフルネスは呼吸に集中しながら、自分の心に何が起こっているのかを観察します。また、味覚や皮膚感覚などの身体感覚を拠り所にしながら心を観察する方法もあります。
 私は今流行りのサウナに赴き、暑さを軸に身体感覚に集中して、心の観察を進めることにしました。すると、私には「締め切りを守らない人間はダメ人間である」という評価基準があり、その基準に適っていない自分を責めていることが確認できました。 
 ここで心の使い方のコツです。自分の思考に気付いたら、その思考を否定せず、他人事のように眺めることが大切です。否定するとネガティブな感情が起こってしまいます。“へぇー、私はこんな考え方をするんだ”くらいに留めて、自分の思考と距離を取ります。そうすると感情への影響が少なくなり、気持ちが落ち着いてきます。

 気持ちが落ち着いたので、コラムの作成に取り掛かりました。ストレスフルな状態から抜け出すためにはレジリエンス(回復力・復元力)を高めることが大切です。私には、締め切りという変えられない現実を受け入れ、柔軟な発想を取り入れることが役に立ちました。つまり、“コラムは客観的な情報を伝えなければならない”という枠組みをいったん崩して、“自分の体験を書いてみる”という発想に至ったわけです。
 凝り固まった思考にとらわれると、感情が激しく動いて身動きが取れなくなることがあります。自分の思考から距離を置くスキルを身につけて、軽やかに生きたいものですね。

※参考資料『マインドフルネス そしてACTへ 二十一世紀の自分探しプロジェクト』熊野宏昭

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